英語の散歩道2ーさぼる

 「サボる」を英語でどう表現するのでしょうか。

 ネットを見てみると、まあ、なんとたくさんの単語があることか、感心しました。

 

 最も無難なのが、skipでしょう。

skip class(school)

「授業(学校)をさぼる」

と表現したりしますが、「正当な理由で休む」(absent oneself from school)ときにも使うので、日本語で言うところの「サボる」ではないときもあります。「~を跳び越す、飛ばす、抜かす、省く」というイメージから、覚えやすいですね。受験でも使います。

 The Random House College Dictionary(以後、RHCD)でも

be absent from、avoid attendance at

(Informalと表示)

と定義して

skip a school class

という例文を載せています。

 この定義からも、skipは「サボる」ときだけでなく、それなりの理由があって「休む」ときにも使うことができる、とわかりますね。

 ジーニアス英和辞典でも、

skip a class

「授業をサボる」

という例文を載せていますが、

「(略式)を休む、サボる」

と、2つの意味で定義しています。

 

 RHCDのskipの定義にmissがありますが、このmissも使えそうです。

miss school for a week(ジーニアス英和辞典)

「学校を一週間休む」

miss one’s classes(研究社 新英和大辞典)

「授業を欠席する」

miss a day of school(RHCD)

 ただ、

miss = fail to attend ~ (with regret)

なので、「(残念ながら)~を休む」という意味になり、「サボる」という意味では使えません。

 ジーニアス英和辞典も研究社新英和辞典の日本語も「休む/欠席する」になっているのはそのためです。

 

アメリカやオーストラリアの 口語(略式)で使われるのが、

play hooky (from school)

です。

 hookは「フック/ホック」という日本語になっているので覚えやすいですよね。「カギ、ホック、カギ(ホック)で留める」という意味で、hookyはその親戚みたいな語です。「かけられていたカギを外していく」というイメージで捉えればいいでしょう。

 RHCDはhookyを

Informal, unjustifiable absence from school

と、明確に定義しています。

 unjustifiable「正当でない」だから、まさに「サボる」になります。

 「留められていたカギを勝手に外してしまう」のだから、「サボった」と言われてもしかたがないですよね。

 OALDCOD、PODともに、play hookyを

play truant

と定義しています。

 truantは

child who stays away from school without good reason(OALD

one who absents himself from place of work,

especially, child who stays away from school without leave(COD

student who stays away from school without permission(RHCD)

child who absents himself from school;

person missing from work(POD)

「ずる休み(無断欠席)する生徒、

仕事を怠ける(サボる)ひと」(ジーニアス英和辞典、研究社)

と、それぞれの辞書で定義されています。

 ただ、play truant「サボる」は少々古い英語なので、積極的に使うことはお勧めしません。

 上述の英々辞典の定義から、特別な単語やイディオムを使わなくても

stay away from school/work without good reason「正当な理由なしに休んでいる」

stay away from school/work without permission「許可なしに休んでいる」

absent oneself from school without good reason/permission

でもよさそうですね。

 

 wag、play wagという英語もあります。RHCDには、Brit.Slangとあり、ジーニアス英和辞典と研究社新英和大辞典にも(英俗語)と表記されていますが、(豪)でも使う人がいるので、(英豪俗)と表記を変えたほうがいいと思いますが。

 RHCDでは、動詞wag

wag = play truant、play hooky

と定義しています。

wag (from) school

というような使い方をします(wagは他動詞、自動詞両方あり)。

 CODでは、名詞wag

wag = truant

と定義して、play wagという例文を載せています。

 なお、wagは本来「~を振る、揺れ動く」という意味で、

the tail wagging the dog

「尻尾が犬を振ること」

という、結構重要な使い方があります。

 「尻尾が犬を振る」わけですから、逆ですね。

 ジーニアス英和辞典には「目下の者が目上の者に采配を振ること」

 研究社新英和大辞典には「下の者が上の者を支配すること、下克上(げこくじょう)」

と、説明されています。

 「本末転倒(ほんまつてんとう)」のような意味でも使います。

 覚えておく価値がある表現です。

 

 「仕事をサボる」ときなどは、goof offと言うときもあります。

 RHCDもgoof offを“waste time、evade work”と定義しています。

 goofはしばしばoffかaroundを伴います。

「仕事をサボる」だけでなく、単にkill time「時間をつぶす」という意味もあり、

We just goofed around till train time.(RHCD)

「電車の時間まで(何もすることがないので)ぶらぶらとして過ごした」

というような使い方もします。

 

 slack offは、loosen「ねじがゆるむ、固まっていたものがゆるむ」(POD)という意味なので、職場で使うと

be lazy in one’s work(OALD

となります。

 「仕事をサボる」ですが、職場を抜け出さなくても、仕事場でサボっているときにも使います。

 

 あと、escape (from)や、「ちょっと抜け出してきた」と言いたいのならget slip fromなど、きりがないのでやめます。

 

 たかが「サボる」という表現でごてごてと書いてきましたが、なぜかと言うと、ふと昔を思い出したのです。

 30年ほど前になりますが、アメリカから日本に遊びに来ていた大学生に、当時、受験でたまに出題されることがあった

cut class

「授業をサボる」

という英語を見せたのです。

 彼は、「その表現はちょっと古くて、僕のお父さんの世代の英語だ」と言うのです。さらに加えて、「僕らは、bag classをよく使うよ」と言いました。

 bagは「カバン」ぐらいの意味しか知らなかったので、辞書を引くと

bag

「(米俗)学校などをずる休みする」

ジーニアス英和辞典より)

と、ひっそりと定義されていました(います)。

 たしかに、bagには「だらりとぶら下がる」という意味があり、CODやRHCDでは、

hang loosely

と定義されています。

 hang looselyは、「何も入っていない袋がだらりとぶら下がっている」様子から、「のんびりやる、くつろぐ、うろつく」(米・カナダ略式)という意味が生じます。

 

 ただ、今でもよく使うかと言うと、少し疑問にも感じます。

 同じように、ネット上の辞書weblioや一部のネット上の解説にあるcut classを使うにも、30年ほど前に大学生が言った「僕のお父さん世代の英語」という言葉がひっかかるのです。

 

 「正しい英語」の「正しい」はcorrectで表現すれば誰も文句を言わない、と少し前のブログでも言ったように、

 「サボる」はskipを使えば誰も文句を言わないでしょう。

 

ちなみに、「電話で病気欠勤を報告する」ことを

call in sick

と言います。使えそうですね。本当に病気かどうかは別として。

 ついでに、「仮病をつかう」は

fake illness

play sick

               (play ~ = pretend to be ~)

     pretend to be ill

    pretend illness

 「~をでっちあげる」は

 invent、fake、make up、fabricate、trump up、forge「をねつ造する」、distort「をゆがめる、曲解する」などを、覚えておけばいいでしょう。

 

Escape from  get away from  get free from  get free of restriction of

Get slip from ちょっと抜け出す

 

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