教える英文法4ー理屈か慣用か

  •       慣用表現か理屈か

     1 as usual

  「いつものように、普段通りに」

 

  He got up early as usual.

  「彼はいつものように早く起きた」

 

     2 than usual

  「いつもよりも、普段よりも」

 

  He got up earlier than usual.

  「彼はいつもよりも早く起きた」

 

 

     《問題提起》

 「彼はいつもより起きるのが遅かった」という日本語を英語で表現するとしたら、どちらの英文が正しいでしょうか。

 

  ⅰ He got up later than usually.

 

  ⅱ He got up later than usual.

 

 “序論”の“解説”で述べたように、比較表現は2つの文を合体させたものです。

 

 一方に

 

  He got up late (that day).

 

という文があり、もう一方に

 

  He usually gets up late.

 

という文があります。

ここでは「起きる時刻の遅さ」を比べているので、lateを中心に2つを合体させて

 

  He got up later than he usually gets up.

 

 than以降のgets upは、前に同じ表現got upがあるのでdoesで受けて

 

  He got up later than he usually does.

 

となります。

 同じ語は省略できるので

 

  He got up later than usually.

 

 従って、ⅰが正しい表現となる、はずです。

 しかし、実際には、慣用的にⅱの文を用います。

 このことはOALDの用例

 

  He arrived later than usual.

 

を見ても明らかです。

 usuallyを使いたければhe doesを残して

 

  He got up later than he usually does.

 

と表現しなければなりません。

 理屈より慣用的な表現(than usual)が優先されるわけです。

 

 こうしたことは他でも見受けられます。

 

  He got up early as usual.

  「彼は普段通り早く起きた」

  → as usuallyではない

 

 言葉は「使う、使わない」という感覚が反映されます。

 

  理屈より慣用表現

 

は、心に留めておいたほうがよさそうです。

 

 later、earlyという副詞に対してどうして形容詞のusualを使って

 

  than usual

  「いつもより」

  as usual

  「いつも通りに」

 

という表現を使うのでしょうか。

 興味がある人は少し考えてみるのもおもしろいかもしれません。

 興味がない人は、「それが慣用表現だから」と割り切ってもいいでしょう。

 

ただ、疑問を抱く学習者にはきちんと理屈を説明する必要があるでしょう。

副詞どうしの比較であるにもかかわらず

 

  than usual「いつもよりも」

  as usual「いつも通りに」

 

と、形容詞を使うのはどうしてか。

 

 慣用表現だとすますことは簡単ですが―また、言葉の学習にはそういう態度も必要ですが―、こうした表現にも筋の通った理屈があります。

 

 学習者から

「どうして形容詞を使うの?」

と質問されて、

「そう言うのが普通だから」

と答えるのはネイティブに任せて、

外国語を教える立場の人間としては、筋の通った返答をしてあげることが

必要だと思います。

 ある一定の年齢に達した知的好奇心旺盛な学習者から

 

  なぜそうなるのか

 

という、物事を追求する姿勢を奪ってはいけない、というのが

僕の考えです。

 

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教える英文法: 比較表現

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