教える英文法8ー他の比較表現

        他の比較表現

                    1  ~erを使わない比較級

× He is kinder than generous.

  「彼は寛大というより親切だ」

 

 比べるものは同じ形にしなければいけない。kindとgenerousを比べているのに、kindにはerを付けてgenerousにはerを付けていない。従って、kinderのerを取らなければいけない。

 

  He is kind than generous.

 

  しかし、このままでは

  ア「彼は寛大というより親切である」

  なのか、

  イ「彼は親切というより寛大である」

  なのか、わからない。

 

  アなら、moreを付けて

  He is more kind than generous.

  イなら、lessを付けて

  He is less kind than generous.

  と表現する。

 

                    2  比較級にtheを付けるケース

                    2.1 「どちらか一方」

 

Baker is the taller of the two?

「ベイカーはふたりのうちで背の高いほうです」

 

「どちらか一方」というときは比較級にtheを付ける。「2人のうちで、背の高いほうがベイカーだ」と言いたいので、theを付けて表現している。

 

                    2.2 The S + V ~、the S + V ・・・(the V + S ・・・)

「~すればするほど、それだけ(そのぶん)ますます…」

 

後半のtheは前半の文の内容を受けて「そのぶん、それだけ」という意味である。

be動詞は省略されることがある。

The more excited he got, the more talkative he became.

「彼は興奮すればするほど口数が多くなった」

The more excited he got, the less talkative he became.

「彼は興奮すればするほど口数が少なくなった」

 

                    2.3 ( all ) the because / since / as S + V

「…であるのでそれだけ(そのぶん)~」

 

He is all the happier because he is rich.

「彼は金持ちなのでそのぶん幸せだ」

I like him all the more for his weakness.

「欠点があるので、私は(それだけ)ますます彼が好きだ」

 

  allはthe 比較級を強めているだけで、付けないこともある。

 

  否定形はnoneを使って表現する。

  none the because S + V …

  「…にもかかわらずではない

 

  He is none the happier because he is rich.

「彼は金持ちにもかかわらず幸せではない

 

  none the less ~ because S + V …

「…にもかかわらず~だ」(noneとlessが打ち消し合って肯定文になる)

 

  He is none the less happy because he is poor.

  「彼は貧乏にもかかわらず幸せ

 

                    3  「ましてや~ / ましてや~でない」の表現

 

肯定文と否定文では使われる語が違います。

肯定文、much more / still more

ましてや~」

否定文、much less / still less

ましてやではない

 

He can understand French, much more English.

「彼はフランス語を理解できる。ましてや英語は当然理解できる」

I cannot speak French, much less read it.

「私はフランス語を話せないし、読むのはなおさらのことだ(当然できない」

 

                    4  「~よりも」にthanの代わりにtoを使う表現

 

be superior to ~「~より優れている」

be inferior to ~「~より劣っている」

be senior to ~「~より年上だ」

be junior to ~「~より年下だ」

    be preferable to ~「~より好ましい」

 

  He is two years senior to me.

  He is two years my senior.

  「彼は私より2歳年上だ」

  2例目のseniorは「年上の人」という意味の名詞。

  

                    5  know better than to

「~することよりもっとよく物事を知っている(わきまえている)」

→「~するほどバカではない

  

  この表現でのbetterの原級はwell

 

  I know better than to accept his proposal.

  「私は彼の提案を受け入れるほどバカではない

  

  than to ~がないときがある。

  You should know better.

  「君はもっとよく物事を知っておくべきだ」

   →「君はもっと分別をもつべきだ

 

        6  the better part of

   「~の大部分」

 

        7  get the better of

   「~に打ち勝つ」

 

        8  think better of

   「~について考え直してやめる / 思い直す」

            think the better of

   「~を高く評価する / ~をよく思う」

 

        9  for better (or) for worse

  「よいときも悪いときも、どんなことがあっても」

 

        10 for better or worse

   「よかれ悪しかれ」

 

        《問題提起》

2.1の表現は、比較級にtheを付けるのが特徴的です。文法問題では、「2つ(2人)のうちで」を意味するof the twoがあるので、それを目印にしてtheが付いている比較級を選べばいいのです。

しかし、実際の英文では常にof the twoがあるわけではありません。むしろ、省略されているケースが多いのです。そのとき読み手は、どういうイメージで読めばいいのか、あるいは、どのように和訳すればいいのかを考えなくてはいけません。それを学習者に伝える必要があるでしょう。

 

 2.2の表現は、be動詞が省略されることがあること、後半の文は倒置が起こる場合があることは、学習者に伝えておくほうがいいでしょう。

 前半の文と後半の文の位置が入れ替わることがあります。解釈の問題集でも扱っているものもあることですし、そのときに起こる形の変化に触れておく必要があります。

 英語表現の視点から考えたとき、一つの問題が生じてきます。

 比較表現は元の英文から変化したものです。

 例えば、

 

  「彼は興奮すればするほど」

 

 

  He got excited.

 

という英文を比較表現にし

 

  He got more excited.

 

比較の部分にtheを付けて、その部分を文頭に出して

 

  The more excited he got, ~

 

と、なります。

 

 後半も同じです。

 

  he became talkative

  → he became more talkative

  → the more talkative he became

 

という変遷を経て表現されたものです。

 

 では、次のケースはどうでしょう。

 

 「~すればするほど、私はますます・・・と痛感した

 

 元の英文で

 

  I realized keenly that ・・・

  I felt keenly that ・・・

  I got aware that ・・・

 

と表現できれば、

 

  the more keenly I realized that ・・・

  the more keenly I felt that ・・・

  the more aware I got that ・・・

 

と英訳できるでしょう。

 しかし、keenlyやawareが浮かばないが、realizeは浮かんだ、ということもあり得ます。わざわざkeenlyを使わなくてもrealizeだけで「~を痛感する」という意味になるので、他の表現方法がありそうです。

 ただ、問題があります。

 元の英文が

 

  I realized that ・・・

 

であれば、~erやmoreを付けて比較級にできる副詞がないのです。

 

 likeのように副詞muchで

 

  I liked ~ very much.

 

と表現できれば、muchを比較級moreにして

 

  the more I liked ~

 

と、英訳できます。

 しかし、

 

  I realized (very) much that ・・・

 

とは表現できません。

 やはり、keenlyが浮かばなければ表現できないのでしょうか。

 いえ、この構文には非常に便利な表現方法があります。ある単語を使えば、比較級にできる形容詞や副詞が浮かばないときでも表現できます。表現方法の引き出しは多いことにこしたことはありません。

 

 2.3の注意すべき説明ポイントは2つあります。

 1つは、noneを付けて否定文にすると、どうして「・・・にもかかわらず~ではない」と意味になるのか、という点です。「『・・・にもかかわらず』と訳しましょう」と言うだけでは、学習者は納得できないでしょう。

 

 2つめは、常にbecauseのような「理由」を表す語がくるとは限らない、ということです。

 代表的によく使われている英文があります。

 

  If you start now, you’ll be able to get there the sooner.

  「今出発すれば、それだけ早くそこに着くでしょう」

 

 If ~を受けて「それだけ / そのぶん」と表現しています。

 

 実際の英文では、ifのような目印さえないときがあります。

 学習者にとってさらにやっかいなのは英作文です。the 比較級「それだけ / そのぶん」を使えば「イイタイコト」をうまく伝えられることに気づかないのです。

 一つの例として

 「桜の花の命は短いからこそ、いとおしく感じるのです」

の英訳を考えてみればわかるでしょう。

 

 4は、to ~は「~と比べて、~よりも」という意味の前置詞であること以外に特に説明する必要はないでしょうが、be second to ~「~に次いで2番目である」という表現にonlyが付いて

 

  be second only to ~

  「~を除けば誰にも(どれにも)ひけをとらない」

 

と表現されるときがあります。

 余裕があれば、be second to ~とのニュアンスの違いを説明してもいいかもしれません。

 

6~10は一種のイディオム(慣用表現)ですが、「なぜこのような意味になるのか」は知っておいてもいいでしょう。

6の表現のbetterはgoodの比較級ですが、「よい」という質的な意味ではなく「十分な、たっぷりな、相当な、かなりの」という量的な意味です。あとは2.1のthe 比較級 ~を意識しながら意味を考えればいいのです。

 

 7も重要表現で

 

  You should not let things get the better of you.

  「状況があなたに打ち勝つようにさせるな」

  →「世の中に負けるな」

 

と、表現します。

 

 8は、betterにtheが付く表現と付かない表現でどうしてこんなに違うのかを考えなくてはいけません。

 

 9と10の使い分けもわかりにくいかもしれません。

 

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