教える英文法25ー英語表現への応用

 今回は英作文について考えてみましょう。

 まず、絶対に避けたいことは、

 

 英文として破綻している文は書かない

 

ということです。

 当たり前のように思えますが、受験生が書いた英文の中には、

 

 主語だけで、動詞がない英文

 

など、

 

もはや英文としての体(テイ)を成していない、考えられないような答案も見受けられます。

 まずは、

 

 英文として認められる文を書くこと

 

を、常に心がける必要があります。

 その上で、

 

正確な英文法の知識を使って英文を書く

 

練習をしましょう。

 そのときに使う英文法は中学校か、せいぜい高校1年で習う知識で十分です。

 例えば、

 

 「私の家の向かいに24時間営業のスーパーがある」

 

という日本文の英訳を考えたとき、

「スーパー」を主語にするなら、

 

 There is an around-the-clock supermarket opposite my house.

 

と、there構文を使うことになるでしょう。

「私の家」を主語にするなら、

 

 My house is across (the street) from a supermarket that is open day and night.

 

と、there構文を使わずに英訳することになるでしょう。

 

 There構文は、不特定なもの(人)を主語にする

 

ことは、おそらく、どこの学校でも習っているでしょう*。

 

*1 there構文について

 

 There構文を、「特定なもの(人)」に使う

 

こともあります。

 

  「私の本は机の上にあります」

 

を英訳すると

 

  × There is my book on the desk.

○ My book is on the desk.

 

となることは有名ですね。

 

  There構文は不特定なもの(人)に使う

 

からです。

 従って、特定なもの(my book)をthere構文で表現できません。

 どうして

 

  There構文は不特定なもの(人)に使う

 

のでしょうか。

 その理由は

 

  There構文はストーリーの中で初めて「~がある / ~がいる」と紹介するときに使う(ある語をストーリーの中に「導入」するときに使う)

 

からです。

 では、次のケースはどうでしょう。

 

  There was a man called ~

   ・・・・・・・・・・・・

   中略

   ・・・・・・・・・・・・

  There was his daughter

  「~に彼の娘がいて、・・・」

 

 さらに別の文

 

  The big pines grew so thick that ~

   ・・・・・・・・・・・・

   中略

   ・・・・・・・・・・・・

  There is the scent of pines in the sun.

  「陽光をうけて松の香りが漂っている」

 

 his daughterもthe scent of pinesも「特定なもの(人)」を表している語です。

 しかし、his( = a man )、pinesはストーリーの中にすでに現れている既知の語です。

 前述の「私の本は・・・」の「私の本」は既知の語ではなくストーリーの中で初めて登場する語(導入語句)です。だから。

 

  × There is my book on the desk.

 

という結果になったのです。

 なお

 

○ My book is on the desk.

 

と表現したときのmy bookは、すでにストーリーの中に登場しているか、少なくとも聞き手は「何のことを言っているのか」わかっていることになります。いきなり話題に登場した語(導入語句)ではありません。

 

 他に、there構文が特定なものに使われるケースをみてみましょう。

 

 限定する語が付いた場合

  There is the fact that ~

  「~という事実がある」

  → 同格のthatによってfactが限定されている

  There is still the problem of sex discrimination in the workplace.

  「職場には依然として性差別という問題がある」

  → 同格ofによってproblemが限定されている

 

 語を列挙する場合

  A:Who can I ask? 「誰に聞けばいい?」

  B:There’s James. 「ジェームズがいるじゃない」

 

  A:Who can I ask?

  B:There’s James, or Miranda, or Annie.

 

  *この場合、単に語を列挙しているというより、相手に「こういう人がいる(ものや場所がある)」と、注意を促す意味で、単に存在を表すthereと違って比較的強く発音されます。

 

 従って、

 

  常にThere構文は不特定なもの(人)に使う

 

という考えは間違いだとわかります。

 では、大学受験生に対してはどうように指導するべきでしょうか。

大学受験生への注意、特に、英作上の注意という点からthere構文を取り上げるのなら、英作はストーリーの最初の数行を英語で表現させていることが前提となっていることが一般的なので、

 

 

  英作文においてThere構文は不特定なもの(人)に使う

 

と、割り切った考えで臨めば問題ないでしょう。

 

 さて、実際の医学系の某私立大学の入試問題(英作)を例にとって考えてみましょう。

 

 「科学者たちは、気候の変化によってCOが増えると、魚の持つお互いを認識しグループを作る能力が阻害されうることを発見した」

 

 「気候の変化によってCOが増える」という箇所ですが、通常「COの増加が気候変動、例えば、地球温暖化をもたらす」と考えられているので、日本語自体に問題があるように思えます。

COの増加が気候変動をもたらし、その気候変動がさらにCOを増やす原因の一つになっている-the climate change can contribute to the rise(increase) in carbon dioxide amounts-のであれば、日本語に問題はないのですが・・・。とりあず、その点はおいて、下線部

 

 「魚の持つお互いを認識しグループを作る能力

 

の英訳だけについて考えましょう。

 英作(英訳)は、自分の頭にインプットされている表現や語をアウトプットする作業です。

 インプットされていなければアウトプットするのにも限界があるでしょう。

 読解や解釈の時間に

 

 the ability(capacity) to ~

 「~する能力」

 

という表現にしばしば出会ったことがあるでしょう。

 そのときに、次のように説明することがあります-解説する講師の力量や考え方によって異なります。

 

 the ability(capacity、power、potential)の次にくる形は

 

 the ability for 名詞

 the ability to V

 the ability of S to V

 

 「SがVする能力」なら、

 

 the ability for S to V ~

 

になりそうですが-to ~の意味上の主語は前置詞forで表すことが多いので-、abilityのような「能力を示す語」(さらに、right「権利」)は、

 

 the ability of S to V

 

となります。

 これは、

 

 「Aの持つ / Aに属する

 

という「所有 / 所属」の意識がまず働くので

 

 the ability of A

 

と表現するのです。

 従って、

 

 「SのVする能力、SがVする能力」

 

 

 the ability of S to V

 

と表現します。

 読解や解釈の時間にこのように教えられていれば、

 

(S)の持つお互いを認識し(V1)、グループを作る(V2)能力」

 

と考えて、

 

 the ability of fish to recognize each other and form a group(groups)

 

と、正確に英訳できるでしょう。

 

 このように、学習者が読解(解釈)で得た知識を英作(英訳)に生かすようにもっていくことが大切です。

 

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