映画と英文法3

映画と英文法3

 

 今回も、テレビレポーターのセリフから。

 

 Now, as I indicated, she was found shortly before midnight.

 

 まず、文を先行詞にする関係代名詞について、おさらいしておきましょう。

 文を先行詞にする関係代名詞には、whichとasの2つがあります。

 

 ⅰ He was late, which is often the case with him.

 

 ⅱ He was late, as is often the case with him.

 

 whichもasも、前文(He was late)を先行詞にする関係代名詞としての働きをしています。

 ただ、少しニュアンスが違います。

 

 whichを使ったⅰのケースでは、which以下の文に重要な意味を持たせています。

 ⅰ「彼は遅れた。あいつは、しょっちゅう遅れてくるな

 

 asを使ったⅱのケースでは、前文(He was late)がイイタイコトで、as以下の内容は補足的なものです。

 ⅱ「(今日は重要な会議があったのに)彼は遅れてきた。まあ、いつものことだけど

 ぐらいの気持ちです。

 つまり、as ~は内容が少し軽くなるので、そのぶん身軽になるのです。身軽さゆえに、全体の文のなかのいろいろなところに飛んでいくのです。

 例えば、

 As is often the case with him, he was late.

 この場合、先行詞は関係詞節の後ろにきています。こういう芸当はwhichにはできません。

 通常、関係詞が受ける語や文は関係詞節より前にあるので「先行詞」と呼ばれているのです。それが、文を先行詞にするasの場合、先行詞より前に飛び出ることがあるのです。これも、as ~の内容の軽さに起因しています。

 日本語でも同じです。

 

 「今日は重要な会議があったのに、彼は遅れた。まあ、いつものことだけど

 「いつものことだけど、彼は今日の重要な会議に遅れた」

と言ってもいいわけです。

 

 これは、話の内容の重要度に対する意識の差ではないかと思われます。

 「いつもそうだ」が重要な意味をもってくれば、後ろに置くでしょう。

 

 「彼は今日も遅れた、いつもそうだ。首にしてやろう

 

 この場合、「いつもそうだ」は「彼を首にしてやろう」につながる重要な意味を持っています。

 

 ところで、asには接続詞としての用法もあります。

 

 As he entered the room, I saw him.

 「彼が部屋に入るとき、私は彼の姿を見た」

 

 asは接続詞として、he entered the roomという文とI saw himという文を結びつけています。しかし、as節の中で、asは、主語や目的語のような文の要素として働いているわけではありません。

 それに対して、関係代名詞としてのasは、as節の中で主語や目的語のような働きをしています。

 As is often the case with him, he was late.

  Asはas節の中で主語の働きをしている

 

 As was the custom in those days, they walked barefoot.

 「当時の習慣だったのだが、彼らは裸足で歩いていた」

  Asはas節の中で主語の働きをしている

 

 He is not from this town, as I later knew from his accent.

 「彼はこの町の出身ではない。彼のなまりから後でわかったことだが」

  asはas節の中で、knewの目的語の働きをしている

 

 As someone said, happiness is always in the past tense.

 「誰かが言ったように、幸せは常に過去時制だ」

  Asはas節の中で、saidの目的語の働きをしている

 

 さて、映画の中のセリフ

 

 Now, as I indicated, she was found shortly before midnight.

 「さて、お伝えしたように、彼女(キンブルの妻)は夜半前すぐに発見されました」

 

ですが、asはas節の中でindicatedの目的語の働きをしていて、後ろの文(she was midnight)を受ける関係代名詞と言えるでしょう。

 ただし、asが目的語になっているケースでは、このasを関係代名詞として認識することに実際にはあまり意味がないように思えます。さすがに、asが主語の働きをしているケースでは、asを接続詞として認識するには違和感がありますが、目的語の場合は、「~のように、~だが」ぐらいの意味で、前か後ろの文を受けている、という認識でいいかもしれません。

 英語で言うと、so「そのように」と同じ感覚で、

 

 He is not from this town. I later knew so from his accent.

 「彼はこの町の出身ではないな。彼のなまりから後でそのようにわかったんだが」

 

Someone said so, happiness is always in the past tense.

 「誰かがそのように言っていたが、幸せは常に過去時制だ」

 

  ただ、あまり意味がないとはいえ、タイトルが「映画と英文法」なので、英文法の観点から説明する必要があったのです。

 

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「映画と英文法 南田 庄」