映画と英文法4

映画と英文法4

 

 リチャード・キンブルの自宅前で、テレビレポーターがカメラに向かって話し続けます。

 

 We know that she made a nine-one-one call to police indicating that there was an intruder in the house or that she was being assaulted.

 

 a nine-one-one「911」は、緊急電話番号で、日本で言うと、110番、あるいは、119番に当たります。

 「ある行為をする」で、最もよく使われる語がmakeで、make a callで「電話をする」という意味になります。

 indicateは、「~を指し示す、をほのめかす」という意味です。

 intruderは、「侵入者」という意味です。

 assaultは、「~襲撃する、を襲う、~に暴行する」という意味です。

 

 今回のポイントは、indicatingの箇所です。

 

 We know that she made a nine-one-one call to police

という文と

 indicate that there was an intruder in the house or that she was being assaulted

という、2つの文を、ingの力を借りてつなげています。

 

 We ~ police + indicating

 = We know that she made a nine-one-one call to police indicating that there was an intruder in the house or that she was being assaulted.

 

 この~ing以下の文が、前の文にどのような働きかけをしているのか、考えてみましょう。

 次の文を見てください。

 

 a child swimming in the river

 

 swimmingが前の語a childを修飾していて、

 

 「川で泳いでいる子供」

 

という意味になります。

 

 このように、ing以下の文が、前の語句を修飾するときがありますが、その語句の部分が文であるときもあります。

 次の文を見てください。

 

Speakers and writers are supposed to make their points clear, meaning that they have to say or write explicitly the idea or piece of information they wish to convey.

 

 meaningの働きに着目しましょう。

 meaningは「~を意味する」という語で、前文を修飾しています。

 

 speakers and writersがtheyに

 are supposed toがhave toに

 make their points clearがsay or write以下の文に

 

それぞれ言い換えられています。

 

 「話し手と書き手は、ポイントを明確にしなければならない。それは、伝えたい意見や情報をはっきり言ったり書いたりしなければならないことを意味している

 

と言っています。

 前文を先行詞にする関係代名詞whichを使って、

 

Speakers and writers are supposed to make their points clear, which means that they have to say or write explicitly the idea or piece of information they wish to convey.

 

と言い換えることができます。

 この考えを、テレビレポーターの言ったセリフに応用すると、

 

 indicating以下の文が、前文のthatを含めたthat節の中の文を修飾していて、

 

 「今、わかっていることは、彼女が911番に電話したということです。それは、家の中に侵入者がいたか、彼女が襲われていたかのどちらかを示しています」

 

と、伝えているのです。

 関係代名詞を使って書き換えると、

 

 We know that she made a nine-one-one call to police, which indicated that there was an intruder in the house or that she was being assaulted.

 

となります。

 

 次回は、同じセリフを、分詞構文の観点から説明します。

映画と英文法3

映画と英文法3

 

 今回も、テレビレポーターのセリフから。

 

 Now, as I indicated, she was found shortly before midnight.

 

 まず、文を先行詞にする関係代名詞について、おさらいしておきましょう。

 文を先行詞にする関係代名詞には、whichとasの2つがあります。

 

 ⅰ He was late, which is often the case with him.

 

 ⅱ He was late, as is often the case with him.

 

 whichもasも、前文(He was late)を先行詞にする関係代名詞としての働きをしています。

 ただ、少しニュアンスが違います。

 

 whichを使ったⅰのケースでは、which以下の文に重要な意味を持たせています。

 ⅰ「彼は遅れた。あいつは、しょっちゅう遅れてくるな

 

 asを使ったⅱのケースでは、前文(He was late)がイイタイコトで、as以下の内容は補足的なものです。

 ⅱ「(今日は重要な会議があったのに)彼は遅れてきた。まあ、いつものことだけど

 ぐらいの気持ちです。

 つまり、as ~は内容が少し軽くなるので、そのぶん身軽になるのです。身軽さゆえに、全体の文のなかのいろいろなところに飛んでいくのです。

 例えば、

 As is often the case with him, he was late.

 この場合、先行詞は関係詞節の後ろにきています。こういう芸当はwhichにはできません。

 通常、関係詞が受ける語や文は関係詞節より前にあるので「先行詞」と呼ばれているのです。それが、文を先行詞にするasの場合、先行詞より前に飛び出ることがあるのです。これも、as ~の内容の軽さに起因しています。

 日本語でも同じです。

 

 「今日は重要な会議があったのに、彼は遅れた。まあ、いつものことだけど

 「いつものことだけど、彼は今日の重要な会議に遅れた」

と言ってもいいわけです。

 

 これは、話の内容の重要度に対する意識の差ではないかと思われます。

 「いつもそうだ」が重要な意味をもってくれば、後ろに置くでしょう。

 

 「彼は今日も遅れた、いつもそうだ。首にしてやろう

 

 この場合、「いつもそうだ」は「彼を首にしてやろう」につながる重要な意味を持っています。

 

 ところで、asには接続詞としての用法もあります。

 

 As he entered the room, I saw him.

 「彼が部屋に入るとき、私は彼の姿を見た」

 

 asは接続詞として、he entered the roomという文とI saw himという文を結びつけています。しかし、as節の中で、asは、主語や目的語のような文の要素として働いているわけではありません。

 それに対して、関係代名詞としてのasは、as節の中で主語や目的語のような働きをしています。

 As is often the case with him, he was late.

  Asはas節の中で主語の働きをしている

 

 As was the custom in those days, they walked barefoot.

 「当時の習慣だったのだが、彼らは裸足で歩いていた」

  Asはas節の中で主語の働きをしている

 

 He is not from this town, as I later knew from his accent.

 「彼はこの町の出身ではない。彼のなまりから後でわかったことだが」

  asはas節の中で、knewの目的語の働きをしている

 

 As someone said, happiness is always in the past tense.

 「誰かが言ったように、幸せは常に過去時制だ」

  Asはas節の中で、saidの目的語の働きをしている

 

 さて、映画の中のセリフ

 

 Now, as I indicated, she was found shortly before midnight.

 「さて、お伝えしたように、彼女(キンブルの妻)は夜半前すぐに発見されました」

 

ですが、asはas節の中でindicatedの目的語の働きをしていて、後ろの文(she was midnight)を受ける関係代名詞と言えるでしょう。

 ただし、asが目的語になっているケースでは、このasを関係代名詞として認識することに実際にはあまり意味がないように思えます。さすがに、asが主語の働きをしているケースでは、asを接続詞として認識するには違和感がありますが、目的語の場合は、「~のように、~だが」ぐらいの意味で、前か後ろの文を受けている、という認識でいいかもしれません。

 英語で言うと、so「そのように」と同じ感覚で、

 

 He is not from this town. I later knew so from his accent.

 「彼はこの町の出身ではないな。彼のなまりから後でそのようにわかったんだが」

 

Someone said so, happiness is always in the past tense.

 「誰かがそのように言っていたが、幸せは常に過去時制だ」

 

  ただ、あまり意味がないとはいえ、タイトルが「映画と英文法」なので、英文法の観点から説明する必要があったのです。

 

youtube

「映画と英文法 南田 庄」

 

 

映画と英文法2

場面は、キンブル医師の家の前です。

 キンブルの妻が何者かに殺害され、彼は捜査官に伴われてパトカーの中に入ります。

 テレビレポーターの一人がマイクに向かってしゃべっています。

 その言葉の中から、表現をピックアップしましょう。

 

 Details are sketchy at this hour.

 「現時点では、詳細は不明です」

 

 ポイントは、sketchyという単語です。

 sketchは「スケッチ」を思い浮かべれば、わかるでしょう。

 「下絵、略図」というイメージがあります。そこから、「概略」という意味が派生的にでます。

 OALDの定義を使って、英語で言うと、

 

 rough draft or general outline, without details

 

となります。

 

 He gave me a sketch of his plans for the trip.

 「彼は私に今度の旅行計画の概略を示してくれた」

 

という使い方をします。

 sketchの形容詞がsketchyで、「概略の、おおざっぱな、不完全な」という意味になり、英語で言うと、

 

 done roughly and without details

 giving only rough outline

 incomplete

 imperfect

 

となります。

 「旅行計画は、まだ不完全で、概略しかできていない」と言いたければ、

 

 My plans for the trip are sketchy.

 

と表現すればいいでしょう。

 これなら、ゴテゴテと単語を並べなくてもいいですね。

 次回も、同じレポーターの言葉から、文を先行詞にする関係代名詞のasについて述べたいと思います。

 

映画と英文法ー告知

「映画と英文法」を、YouTubeでも視聴できるようにしました。

 英文法解説を、画面を見ながら音声で聴くことで、視覚・聴覚の両方からインプットできるようにすることが目的です。

 また、随所に現れる英文を、ネイティブが発話することで、リスニング力を自然に身に付けることができれば、という狙いもあります。ネイティブの発話の一部は、アメリカ人男性、アメリカ人女性、イギリス人男性、イギリス人女性の声を聴くことで、できるだけいろいろなパターンの発話を聴くことができるように工夫してあります。

 時間があれば、こちらも視聴してください。

  https://youtu.be/xaekJvBTcbA

 

映画と英文法ー告知

「映画と英文法」を、YouTubeでも視聴できるようにしました。

 英文法解説を、画面を見ながら音声で聴くことで、視覚・聴覚の両方からインプットできるようにすることが目的です。

 また、随所に現れる英文を、ネイティブが発話することで、リスニング力を自然に身に付けることができれば、という狙いもあります。ネイティブの発話の一部は、アメリカ人男性、アメリカ人女性、イギリス人男性、イギリス人女性の声を聴くことで、できるだけいろいろなパターンの発話を聴くことができるように工夫してあります。

 時間があれば、こちらも視聴してください。

  https://youtu.be/xaekJvBTcbA

 

映画と英文法ー前回ブログの一部訂正

前回のブログの一部を次の文に訂正

 

 He could have broken his leg.

 

ⅰ(彼女が足を骨折しなかったことが事実として前提になっている場合)

 「彼なら足を骨折しただろう」

  → 主語であるHeが条件の役割をしている仮定法で、「(実際は)彼女なので足を骨折しなかった」と言っている。

映画と英文法ー前々回の追加補足

前々回のブログの補足

 前々回で仮定法を取り上げました。

 基本的には、仮定法は「事実に反する」文です。

 

 Without your advice, he could have broken his leg.

 「あなたのアドバイスがなければ、彼は足を骨折していただろう

 →「(実際は)あなたのアドバイスがあったので、彼は足を骨折しなかった

 (この場合のcouldは可能性を表している)

 

 条件の部分(Without your advice)がなければ、どんな意味になるでしょうか。

 

 He could have broken his leg.

 

ⅰ(彼女が足を骨折したことが事実として前提になっている場合)

 「彼なら足を骨折しなかっただろう」

  → 主語であるHeが条件の役割をしている仮定法で、「(実際は)彼女なので足を骨折してしまった」と言っている。

 

ⅱ(「彼女」のような別人の存在を前提にせず、あくまで「彼」について語っている場合)

  この場合、この表現が発せられた状況によって異なってきます。

  ア)He were stupid to go down a steep slope like that. He could have broken his leg.

    「あんな急斜面を下るなんて、彼はどうかしているよ。(へたをすれば)足を骨折したかもしれない」

    → いわゆる仮定法過去完了で、(実際には)彼は足を骨折しなかった。

  イ)なかなか山を下りて来ない彼を心配して

     He could have broken his leg.

    と言えば、

     「彼は足を骨折したかもしれない」

    → 「彼は足を骨折したかもしれない」と、推量している。

      広い意味では、仮定法と言えるでしょう。ただ、事実は完全に逆、と言っているのではなく、「彼は足を骨折したかもしれない」と推量しながらも、「ひょっとしたら、足を骨折していないかもしれない」という気持ちも込めている、という意味で、一種の仮定法なのです。

      なお、肯定文-疑問文や否定文ではない文-の場合、

       He can have broken his leg.

      とは言わないので、注意しましょう。

 

 これら3つのケースのうち、ⅱのイを疑問文にしたのが、逃亡者の中のシナリオで使われた文なのです。

 

 Could he have broken his leg?

 「(はたして)彼は足を骨折したのだろうか」

 

 Couldn’t he have broken his leg?

 「彼は足を骨折しなかっただろうか」

 → Could he ~?に比べると、「足を骨折したのではないか」という気持ちが強く表れている。

 

 あらためて、

 

 “Couldn’t you have made a mistake?”

 「ミスはなかったのだろうか」

 「ミスをした可能性はないのか(誤認逮捕だった可能性はないのか)」

 

と、詰め寄る記者の本意は、

 

 「ミスをしたのではないか」

 「(ハリソン・フォード演じる)キンブル医師の逮捕は誤認逮捕だったのではないか」

 

という気持ちなのです。