映画と英文法ー前々回の追加補足

前々回のブログの補足

 前々回で仮定法を取り上げました。

 基本的には、仮定法は「事実に反する」文です。

 

 Without your advice, he could have broken his leg.

 「あなたのアドバイスがなければ、彼は足を骨折していただろう

 →「(実際は)あなたのアドバイスがあったので、彼は足を骨折しなかった

 (この場合のcouldは可能性を表している)

 

 条件の部分(Without your advice)がなければ、どんな意味になるでしょうか。

 

 He could have broken his leg.

 

ⅰ(彼女が足を骨折したことが事実として前提になっている場合)

 「彼なら足を骨折しなかっただろう」

  → 主語であるHeが条件の役割をしている仮定法で、「(実際は)彼女なので足を骨折してしまった」と言っている。

 

ⅱ(「彼女」のような別人の存在を前提にせず、あくまで「彼」について語っている場合)

  この場合、この表現が発せられた状況によって異なってきます。

  ア)He were stupid to go down a steep slope like that. He could have broken his leg.

    「あんな急斜面を下るなんて、彼はどうかしているよ。(へたをすれば)足を骨折したかもしれない」

    → いわゆる仮定法過去完了で、(実際には)彼は足を骨折しなかった。

  イ)なかなか山を下りて来ない彼を心配して

     He could have broken his leg.

    と言えば、

     「彼は足を骨折したかもしれない」

    → 「彼は足を骨折したかもしれない」と、推量している。

      広い意味では、仮定法と言えるでしょう。ただ、事実は完全に逆、と言っているのではなく、「彼は足を骨折したかもしれない」と推量しながらも、「ひょっとしたら、足を骨折していないかもしれない」という気持ちも込めている、という意味で、一種の仮定法なのです。

      なお、肯定文-疑問文や否定文ではない文-の場合、

       He can have broken his leg.

      とは言わないので、注意しましょう。

 

 これら3つのケースのうち、ⅱのイを疑問文にしたのが、逃亡者の中のシナリオで使われた文なのです。

 

 Could he have broken his leg?

 「(はたして)彼は足を骨折したのだろうか」

 

 Couldn’t he have broken his leg?

 「彼は足を骨折しなかっただろうか」

 → Could he ~?に比べると、「足を骨折したのではないか」という気持ちが強く表れている。

 

 あらためて、

 

 “Couldn’t you have made a mistake?”

 「ミスはなかったのだろうか」

 「ミスをした可能性はないのか(誤認逮捕だった可能性はないのか)」

 

と、詰め寄る記者の本意は、

 

 「ミスをしたのではないか」

 「(ハリソン・フォード演じる)キンブル医師の逮捕は誤認逮捕だったのではないか」

 

という気持ちなのです。