英語の散歩道3ー擬人化

擬人化

 

 対象が「もの」であっても「まるで人間が相手であるかのように表現する」ことですね。

 英語表現の中にもそういう意識が働いていると思われるものがいくつかあります。

 今回は、そのうちの2つの例を挙げます。

 

「良書に出会う

 「~に出会う」という日本語自体が一種の擬人化された表現かもしれませんが、

 

  meet a good book

 

と表現できるでしょうか。

 結果から言うと、

 

できません

 

 このケースで最もよく使われるのは

 

  find a good book

 

でしょう。

 さらに、come across「~に(偶然)出会う」も使えそうです。

 come acrossは「もの(ごと)に出会う」ときにもよく使います。

 

  I came across surprising news.

 

 OALDでも

 

  find or meet by chance

 

と定義して

 

  I came across this old brooch in a curio shop.

 

という用例を載せています。

 

 come across ~は「~に偶然出会う」だから「本に出会う」には使わない

 

と指摘する人もいますが、「人との待ち合わせで、時間つぶしに何気なく入った本屋で偶然いい本に出会う」こともあります。個人的には

 

  come across a good book

 

でも問題ないと思います。

 なお、他の「~に出会う」という表現も見ておきましょう。

 

  meet withは「事故や困難などを経験する」

  encounterは「人」以外では「困難、危険など」に限られる

 

 ここで終わってしまえば、“擬人化”のテーマに合いません。

 あらためて

 

  meet a good book

 

は正しくはありません。

 でも、

 

  meet a good book

 

と表現する人―ネイティブのプロの文章家―もいます。

 おそらく、その文章家は、

 

 本そのものよりも、いい本を書いた著者(当然、人間)に出会った

 

という感動をもったのでしょう。

 

 2つ目の例として、

 

 「科学によって説明できないものがかなり多い」

 

という文を考えましょう。

 

  There are so many things which cannot be explained by science.

 

という表現はどうでしょう。

 少し不自然な気がしますが、その気持ちはどこからくるのでしょうか。

 不自然に思えた原因は、

 

byの次には「行為主体」がくる

 

ということにありそうです。

 事象を説明する「行為主体」は人間であって科学ではありません。科学は事象を説明するときに人間が使う手段に過ぎないのです。

 つまり

 

  cannot be explained by humans(human beings) through science

 

となります。

 byを使うのであれば

 

  by means of science

 

と表現すれば、容認度は上がるでしょう。

 あるいは、「行為主体」のbyではなく「手段」のbyであることを示すために

 

  by using science

  「科学を使って」

 

あるいは、分詞構文で

 

  using science

 

と英訳すればいいでしょう。

 whichに続く英文としては

 

  which cannot be explained through science

  which cannot be explained through a(the) scientific approach

  which cannot be explained by means of science

  which cannot be explained in terms of science

  which cannot be explained in scientific terms

  which cannot be scientifically explained

  which cannot be explained (by) using science

  which we cannot completely explain through science alone

  which we cannot fully make out through a scientific approach alone

  which we cannot completely solve through science alone

 

など、いくつか考えられます。

 では

 

  which cannot be explained by science

 

とは言わないのか、と問われると

 

  そう表現する人も複数いる

 

と答えるしかありません。

 やはり、これも擬人化の一種で、scienceをscientists「科学者」と捉える意識が働いているのかもしれません。

 

 ついでに、これは擬人化の問題とは無関係なのですが、

 

  「この(今回の)経験によって

 

 

  by this experience

 

と表現するのか、という疑問に対して、

 

  少数だけど複数いる

 

ということになります。

 しかし、

 

  from this experience

  through this experience

  (by) experiencing this「これを経験することによって」

 

と表現するほうが無難でしょう。

 

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