映画と英文法5

映画と英文法5

 

 リチャード・キンブルの自宅前で、テレビレポーターがカメラに向かって話し続けます。

 

 We know that she made a nine-one-one call to police indicating that there was an intruder in the house or that she was being assaulted.

 

 a nine-one-one「911」は、緊急電話番号で、日本で言うと、110番、あるいは、119番に当たります。

 「ある行為をする」で、最もよく使われる語がmakeで、make a callで「電話をする」という意味になります。

 indicateは、「~を指し示す、をほのめかす」という意味です。

 intruderは、「侵入者」という意味です。

 assaultは、「~襲撃する、を襲う、~に暴行する」という意味です。

 

 今回のポイントは、indicatingの箇所です。

 

 We know that she made a nine-one-one call to police

という文と

 indicate that there was an intruder in the house or that she was being assaulted

という、2つの文を、ingの力を借りてつなげています。

 

 We ~ police + indicating

 = We know that she made a nine-one-one call to police indicating that there was an intruder in the house or that she was being assaulted.

 

 2つ以上の文をつなげるには、通常、接続詞の力を借ります。しかし、接続詞の力を借りずに、現在分詞のような分詞を使って2つの文をつなげるときがあります。これを、分詞構文と呼んでいます。

 ここで、分詞構文について、簡単におさらいしておきましょう。

 

 今、述べたように、分詞構文とは、接続詞の力を借りずに、分詞を使って文と文をつなぐ構文のことです。

 分詞には、現在分詞と過去分詞があります。

 通常は、現在分詞を使いますが、受動態の場合は、beingを省略して過去分詞から始めます。

 

 ⅰ Ving ~, S + V ・・・

 

 ⅱ Being Ved ~, S + V ・・・

→ Ved ~, S + V ・・・

   (過去分詞には、不規則変化もありますが、とりあえず、ここでは、規則変化のVedに代表させておきます)

 

ⅰ Arriving on the scene, I saw him running away.

「私が現場に着いたとき、彼が走り去るのを見た」

 

ⅱ Seen from here, the stone looks like a human face.

   「ここから見ると、その石は人間の顔のように見える」

 

 Beingを省略した分詞構文には、過去分詞から始まる形以外のものもあります。

 例えば、形容詞から始まる分詞構文

Curious to know how the machine works, he immerged himself in studying its working.

 「彼はその機械の動きを知りたくて、その動きの研究に没頭した」

 

 名詞から始まる分詞構文

Always the self-confident one, she made it to San Francisco for college.

「彼女は常に自信家だったので、大学はサンフランシスコに行った」

 

 分詞構文の節-以下、分詞節と呼びます-が後ろにきている文もあります。

 

 S + V ・・・, Ving .

 

 用例を挙げておきましょう。

 

Japanese traditionally speak indirectly, leaving the listener to figure out what the point is.

 「伝統的に、日本人は遠回しな話し方をして、ポイントが何か理解することを聞き手にまかせておく」

 

 分詞構文の意味は、文脈で決まり、いくつか代表的な意味があります。あるいは、分詞構文には、時制に関すること、否定の形、慣用的な表現など、いくつかのポイントがありますが、詳細は、またの機会に述べたいと思います。

 

 今回は、分詞構文の主語に着目しましょう。

 今まで出てきた用例でわかるように、分詞節の主語は基本的には全体の文の主語(主節の主語)と一致しています。その結果、分詞節の主語を表示する必要はないのです。

 主語が異なる場合は、分詞-あるいは、形容詞-の前に主語を表示します。

 

 Nobody having any more to say, the meeting was closed.

 「誰もそれ以上言うことがなかったので、会は閉会になった」

 (オックスフォード現代英語用法辞典より)

 

 全体(主節)の主語はthe meetingですが、分詞節の主語はNobodyです。このように、主語が異なっている場合は、表示するのが原則ですが、その原則に従わないケースもあります。

 

Generally speaking, women live longer than men.

 「概して言えば、女性は男性より長生きである」

 

 broadly speaking「おおざっぱに言えば」、strictly speaking「厳密に言えば」、frankly speaking「率直に言うと」のように、主語が「漠然とした一般の人」であったり、「話し手」であることがわかりきっている、というケースです。慣用的な表現が多く含まれています。

 

 It wasn’t a bad day, considering.

 「いろいろ考えてみると、悪い一日じゃなかった」

  considering一語で、「いろいろ考えてみると」( = considering everything)という意味になります。よく使われるので、覚えておけば、役に立つでしょう。

 

 さて、今回の場合は慣用的な表現ではありません。

 次の文の分詞構文の主語に着目しましょう。

 

 He didn’t turn up, causing her to get angry.

「彼は現れなかった。そのことは彼女を怒らせた」

 

 「彼女を怒らせた」原因は、「彼自身の存在」ではなく、「彼が現れなかった」ことです。

 つまり、causingの主語は、主節の主語Heではなく、主節そのものです。

 このように、前文(主節)が主語の場合も、分詞節の主語は表示されません。主語を表示しなくても、内容がわかるからです。文脈からわかるのに、語彙数を増やしてわざわざ文を難しくする必要はない、というわけです。

 

 テレビレポーターのセリフに戻りましょう。

 

 We know that she made a nine-one-one call to police indicating that there was an intruder in the house or that she was being assaulted.

 

 「彼女が911番に電話した」ことが、「家の中に侵入者がいた」、あるいは、「彼女が誰かに襲われていた」ことを示しています。

 つまり、分詞indicatingの主語は前文のthat、ということになります。

 

 ただ、感覚的には、前回のブログ(映画と英文法4)で説明したように、indicating以下の文は前文のthat節にかかる修飾部と捉えるほうが分かりやすいかもしれません。

 indicatingの働きがどちらの場合であるにせよ、これ以上の分析はあまり意味がないでしょう。

 

 次回は、再度、テレビレポーターのセリフを取り上げます。

 というのも、実際のセリフには、ある副詞が加わっていたのですが、ポイントを絞って説明するために、その副詞を省いていたのです。

 副詞の中には、2つの働きをする語があります。そのあたりのことを詳しくお話したいと思います。

 では、今日は、これで失礼します。

 

 音声付きの解説は、youtube“映画と英文法”で公開しています。

 

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