英語の散歩道11ー英語表現と文法

英語表現と文法

 

 次に刊行を予定している“教える英文法-関係詞編”でも触れていますが、

 

文法的には問題がなくても現代の表現としては問題あり

 

ということにしばしば出会います。

 例えば、主格の関係代名詞whoと目的格の関係代名詞whomの関係にしてもそれが言えます。

 最近、というより、少し前の参考書から

 

  目的格の関係代名詞にwhoが使われる例

 

が載っています。

CODでも、関係代名詞のwhoの用例として、

 

  the man whom(colloqwho) you saw

 

という文を載せています( colloqは「口語体、日常会話」を意味する

colloquialの略語である)。

 この点について、OALDでも、

 

 Whom is often replaced by that except after a prep

 「前置詞の後を除いては、whomの代わりにしばしばthatが使われる」

 

と、述べられています。

 その説明に続いて、次の用例が載っています。

 

  That is the man (whom) I met in London last year.

  That is the man about whom we were speaking.

  That’s the man (that) we were speaking about.

  That’s the man (whom) you mean.

 

 僕もこの考えに賛成で、目的格の関係詞でthatが使われている文をよく見かけます。

 OALDの考えに、CODの考えや現代の傾向を加味すると、

 

  目的格の関係代名詞(先行詞が「人や動物」)の場合、

  thatか省略が一般的、口語体ではwhoも使われる

 

となります。

 whomを否定しているわけではありませんが、一般的とは言えないことになります。

 ただ、文法的には問題がないので、

 

○ That’s the man whom you were speaking about.

 ○ That’s the man about whom you were speaking.

 ○ That’s the man that you were speaking about.

 × That’s the man about that you were speaking about.

    前置詞が前にある場合は、thatは不可

○ That’s the man you were speaking about.

 ○ That’s the man who you were speaking about.

 

 しかし、現代の表現としては、whomがあまり使われなくなっています

 

 従って、英語表現としては、

 

× That’s the man whom you were speaking about.

 △ That’s the man about whom you were speaking.

 ○ That’s the man that you were speaking about.

 × That’s the man about that you were speaking about.

    前置詞が前にある場合は、thatは不可

○ That’s the man you were speaking about.

 ○ That’s the man who you were speaking about.

 

と、変わってしまうのです。

 この点に関して、“オックスフォード現代英語用法辞典”でも、

 

  動詞や前置詞の目的語になるwhomは、特に、会話体の英語では、むしろ使われることはまれである。whomは一般的に、省略されるか、whothatで置き換えられる。whomが前置詞で終わる節で使われることはまずない。

 

と説明しています。

 

whomが前置詞で終わる節で使われることはまずない。

 

と断定しているのです。

 ただ、教える立場の視点に立てば、

 

  理屈説明を飛ばして、いきなり、

 

That’s the man you were speaking about.

 

という例文を出して説明されても、特に、初学者は混乱するだけでしょう。

 まずは、主格と目的格の違いを理解しなければ、

 

  先行詞が関係詞節の中でどんな働きをしているのか

 

という、関係詞の根本の理解につながらないでしょう。

 

  the man who is speaking with him

 

に対する

 

  the man whom you were speaking about(of)

 

の形を理解した学習者に対して、

 

  動詞や前置詞の目的語になるwhomは、特に、会話体の英語では、むしろ使われることはまれである。whomは一般的に、省略されるか、whothatで置き換えられる。whomが前置詞で終わる節で使われることはまずない。

 

という知識を説明すればいいのです。

 

the man whom you were speaking about(of)

 

という英文を提示することに抵抗があるなら、

 

  were speaking about(of)をmeanで言い換えて、

 

  the man whom you mean

 

という文を使うこともできますが、

 

  動詞だけでなく前置詞の後にくるのも目的語なので目的格

 

という事に対する理解につながりません。

 前置詞の目的語という概念を説明する機会を逸してしまいます。

 説明の出発点を間違えると、うまく着地できません。

 

  The farther way around is the nearest way home.

  「急がば回れ

 

です。

 今回取り上げた例以外にも、

 

 文法的にはまったく問題ない、使っている単語も問題ない。しかし、表現として不自然、あるいは、古い、というケース

 

は多々あります。

 例えば、

 

  「人として成長する」

 

に当たる英語表現。

 よく使われる単語がdevelopです。

 

  He’s developed a lot as a person.

  He’s developed fully as a person.

 

 growを使うにしても、

 

  grow and develop

 

と表現します。

 improveを使って、

 

  improve oneself

 

と表現するのはどうでしょうか。

 実際に使われている例を見てみましょう。

 

  Optimists see the setback as something that can be coped with, and a chance to improve themselves.

 

 まったく問題なさそうです。

 では、現代、よく使われているのか、というと、

 

  少し古い

 

のです。

 名詞で、

 

  self-improvement

  「自己修養、自己鍛錬」

 

という表現はありますが、動詞で表現するとなると、「古い」のです。

 こういった事柄は、

 

 読んだり、聞いたり、話したりしながら経験で学んでいく

 

しかありません。

 

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