英語の散歩道(節とwillの関係)

諸々の事情で、ブログを書くのは約10か月ぶりです。

みなさん、お元気でしょうか。

 

同僚で、某大手予備校講師の人からよく質問を受けることがあります。

なかなか面白い質問で、僕自身も勉強になります。

先日も、

 

「この英文で使われているwhether ~は名詞節か副詞節かのどちらでしょうか。名詞節のようにも思われるのですが、

未来の内容にもかかわらずwillが使われていないのです。また、辞書によっても意見が分かれていて・・・」

 

という質問を受けました。

英語に通じている人なら当たり前の知識ですが、

 

“時や条件を表す副詞節の中では、未来の内容であってもwillを使わないー例外的なケースもあります。名詞節の中なら、未来の内容ならwillを使って表現する”

 

という原則がありますね。

 例えば、

 

  I don't know whether he will come.

 「彼が来るかどうかわからない」

 

という場合、whether ~はknowの目的語になっていて、名詞節だから当然will comeと表現しています。

 ところが、careやmatterなどの動詞の後に続く場合はこの原則通りに表現されないのです。

 

 以下、僕が同僚に送ったメールです。

 

1 ある文におけるwhetherは名詞節か副詞節か

 2 whetherの中にwillを入れるべきかどうか

 

という2点の疑問についてですが、これは論点がまったく別で、

 

 It matters littleI don’t careなどの表現の後に続くのは名詞節か副詞節か

 

という問題に置き換えるべきだと考えられます。

 この問題に答える前に2つの文法事項(構文)について確認しておきましょう。

 

 1 他動詞の後には目的語がきて、従って、該当する語句やフレーズは名詞(名詞節)と考えるのが普通である。

 2 基本的には、未来の内容なら、名詞節の中にはwillを入れ、副詞節の中には-例外的な一部のケースを除いて-willを入れないのが原則である。

 

 研究者新大英和辞典の例文より

 

1 I wonder whether he will go himself or send you.

 

2 I don’t know whether he will be here.

 

3 It is doubtful(uncertain) whether he will come.

 

 以上、いずれも未来の内容の名詞節

 

4 Whether he comes or not, the result will be the same.

 

5 Whether we help or not, the enterprise will fail.

 

 以上、副詞節(譲歩節)

 

 ここまでは原則通りですね。

 しかし、この原則が、It mattersやI don’t careの後では違ってきます。それは、whetherに限ったことではありません。

 以下、ジーニアス英和辞典の用例より。

 

6 (自動詞としてのcare)

  I don’t care whether he leaves or stay.

 

 本来ならcareの後のwhether ~を目的語として捉え、名詞節であるが故にwill leave ~となるところ。

 

7 (他動詞としてのcare)

  Who cares when she marries(× will marry)?

 

 6のケースと違って、他動詞としてcareを定義付けしているにもかかわらず、名詞節(疑問詞節)のwhenの中のwillの使用を否定している。

 なお、6を自動詞のcare、7を他動詞としてのcareと分けた理由は不明である。

 この点、研究社新英和大辞典は割り切って両方のケースのcareを自動詞扱いしているが、そのほうがすっきりしているように感じます。

 以下、研究社新英和大辞典の用例より。

 

8 I don’t care if I go.

 

9 I don’t care what happens now.

 

 9のwhat ~は疑問詞節なので名詞節(careの目的語)のはずであるが、willを使っていない。

 

 matterにいたっては、さらに、原則通りに解釈できない。

 

 以下、ジーニアス英和辞典の用例より。

 

10 It matters little if(whether) he succeeds or not.

  (if / whether節の中にはwill、wouldは用いない)

 

 whetherはともかく、ifはor notを用いている以上完全に名詞節だと考えられるが、×will、wouldなのである。

 

11 It doesn't matter to(with) me whether she comes here or not.

 

 以下、研究社新英和大辞典の用例より。

 

12 It doesn’t matter whether we are late.

 

 なお。英々辞典の用例では、

 OALDは、careを自動詞と定義して

 

13 He doesn’t care much (about) what happens to me.

 

14 He doesn’t care what they say.

 

 ただ、上の2例は、未来や現在に関係なく「いつも気にしない」と考えることもできます。

 

15 It doesn't matter to me what you do or where you go.

 

 オックスフォード現代英語用法辞典には

「現在時制はIt doesn’t matter、I don’t care、I don’t mind、It’s not important、No matter where、Whereverおよび類似の表現の後でも用いられる」

 

という解説の後に、

 

16 It doesn’t matter where we go on holiday.

 

17 I don’t care what we have for dinner if I don’t have to cook it.

 

という用例を載せています。

 もっとも、この2例も「未来」というより「いつも気にしない」というニュアンスが読み取れます。

 おそらく、未来という意識はなく、この「いつも気にしない、重要ではない」という意識が

 

It doesn’t matterI don’t careI don’t mindIt’s not importantNo matter whereWhereverおよび類似の表現の後では現在時制が用いられている

 

理由ではないかと思われます。

 なお、オックスフォード現代英語用法辞典の“whether ~ or not”の説明の箇所に

 “whether ~ or notの節は文につけ加えられることがある。その意味はIt doesn’t matter whether ~ or not「~であろうとなかろうとかまわないが」で始まる新しい文と似ている”

 

という記述がありました。

 これは、元々あった文

 

 I don’t care.

 It doesn’t matter.

 

に、副詞節

 

 whether ~ or not

 「~であろうとなかろうと」

 

を加えたものと解釈できます。

 いずれにせよ、

 

 I don’t careIt doesn’t matterI don’t mindIt’s not importantOALDCODmatterbe of importanceと定義している)などの表現の後に節を続けた文は、未来という意識ではなく、「いつでも気にしない、どうでもいいことだ」という意識が働き、現在時制で表現するのが基本である。このとき、例えば、whether or notを「~かどうか」と名詞節として訳そうが、「~であろうとなかろうと」と副詞節として訳そうが、どちらも言っていることは同じであり、それは日本語の問題であって大した問題ではない

 

ということになります。


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