英語の散歩道(~になる)

「英語の散歩道」というタイトルでブログを書き出して3年以上になりますが、諸々の事情で「このへんでいったんペンをおこうか」と考えていました。

 しかし、ここ2年ほど、複数の同僚からの質問も増え、頭を整理する意味でもブログを続けるのも意義があるかな、と思い直し、ペースダウンしてでも続けといこうかとも考え直しました。

 ただ、投稿の間はかなりあくかもしれませんし、ひょっとすれば、ペンをおくことになるかもしれません。それまで付き合っていただければ、と思います。

 以下、「~になる」という表現について、同僚からの質問に答えて送ったメールです。

 

 

「~になる」

「~になる」といっても、いくつもの語が使われていますよね。

 

 become、get、grow、fall、turn、go、come、runなど

 

 まずは、ジーニアス英和辞典から見ていきましょう(記述・表現の仕方は一部変えています)。

 

ア Cは名詞、形容詞、過去分詞

イ getより堅い語

ウ 現在形で使うのはまれ

 

1 He became(× got) a king / a teacher.

   Cが名詞の場合getは不可

2 She became(got) sick / wiser.

3 She became(× got) famous.

   この例文に関して、get(自動詞)の項目に「一時的な状態を表す場合のみに用いられ、永続的な状態を表す形容詞・過去分詞と用いられるのは不可」と説明し、

  She became(× got) tall / famous / pretty.

  という例文を載せています。

4 The truth will never become known to them.

   この例文に関して、「純然たる受け身の場合は、becomeは不可」と説明し、

   He was(got、×became) killed.

   という例文を載せています。

5 I want to become(be) a teacher.

   この例文に関して、「これから~になる」という意味ではbeと交換可」と説明しています。

  5に関してですが、言い換えれば、「すでに先生になっている」場合は、becomeは不可ということになります。

  例えば、

  「彼は成長し、りっぱな先生になった」

  を英語にした場合、

  He’s grown up to be a good teacher.

  (副詞的用法・結果のto)

  とは表現しても

  He’s grown up to become a good teacher.

  とは言わない、ということになります。

  これは当然のことで、「彼は成長して、すでにいい先生になっている」わけで、「これからいい先生になる」わけではないですから。

  (なお、

  grow to be

  と表現すると、

  get to be ~「~になる」

  と同じ意味になります。

  grow up to be ~

  と表現しないと、「成長して~になる」とはなりません-釈迦に説法でしたね。失礼!)

  話を戻しますが、

  「彼はいい先生になるために一生懸命勉強した」

  なら、「これからいい先生になる」わけですから、

  He studied hard in order to be a good teacher.

  He studied hard in order to become a good teacher.

  のどちらでもいい、ということになります。

 

 次に、getに関するジーニアス英和辞典の例文、解説を見てみましょう。

ア becomeより口語的。

イ Cは形容詞・形容詞化した過去分詞。名詞は不可。

ウ 一時的な状態を表す形容詞・過去分詞のみに用いられ、永続的な状態を示す形容詞・過去分詞と用いるのは不可。

  ただし、進行形では可能。

  × She got tall.

○ She is getting tall.「彼女は背が伸びている」

 ウの説明箇所で、「進行形では可能」というのはよくわかりますよね。「状態にだんだん変化が現れている」ことを進行で表現することはできるわけですから。

 例えば、resembleが「今、誰々に似ている」というときは

 ○ She resembles her mother.

 × She is resemble her mother.

ですが、「彼女はお母さんにだんだん似てきた」なら、

○  She is resembling her mother.

ですから。

 

 この段階で2点、疑問が生じませんか?

 まず、getの解説イの「Cは形容詞化した過去分詞」という箇所です。

 たしか、becomeの例文4で、「純然たる受け身の場合は、becomeは不可」と説明し、

   He was(got、×became) killed.

という例文を載せていました。

 つまり、tired、interestedのように形容詞化した過去分詞でもgetなら使えることになります。ところが、getのイでは「Cは形容詞化した過去分詞」と限定しているのです。killedが形容詞化していない過去分詞であることは明白です。

 これはどういうことでしょうか。

 この点を明らかにするために、今度は「研究社新英和大辞典」のgetの項目を見ると、

「受け身には、通例動作主を表すby句は用いられず」という解説があり-同じ内容はジーニアス英和辞典でも書かれています-、

 hurt、caught、stuck、drownedなどの語と共にkilledも掲載されていました-なお、過去分詞をどの段階で形容詞と考えるのか、恣意的な面もあります。

 例えば、caughtやstuckなどは

 I got caught in a shower and (got) drenched / soaked.

 「土砂降りにあって、ずぶ濡れにあった」

 I got(was) caught in a traffic jam.

 「渋滞にあった」

 I got stuck in traffic congestion.

 「渋滞にあった」

 などの表現でお馴染みですよね。

 

 つまり、byを使って、「~によって」と、受動態の意味合いが強く出た場合は、becomeは当然として、getも不可ということになります。

 

○  He was(got) killed in the traffic accident.

 × He was(× got) killed by them.

 

 なお、強い目的意識が働けば、逆にbe動詞は不可になります。

 

 He got(× was) arrested to prove her innocence.

 「彼は彼女の無罪を立証するためあえて逮捕された」

 (ジーニアス英和辞典の用例より)

 

 これは当然のことで、was arrestedは完全な受動態です。受動態は別名「受け身」と呼ばれています。自分の意志で「~される」のはもはや「受け身」ではありませんから。

 

 ところで、その他いくつかの問題もあります。

 一般に、「~である」という「状態」を表すbeを「~の状態になる」という意味にするにはbeをbecomeにする、と学習します。

 例えば、

 be able to ~

 「~できる」

を、「~できるようになる」という意味にしたければbecome able toにする、と聞いた人もいるでしょう。

 

 「彼は英語を話せる」

 He is able to speak English.

 

を、「彼は英語を話せるようになった」という意味にしたければ

 

 He has become able to speak English.

 

と表現すればいいことになります。

 実際、大学受験の英作の解答例として上述の英訳例が載っていたりしました(します?)。

 しかし、この英語はしばしば「日本人的発想の英語」という指摘も受けました。

 自然な英語は、

 

 He’s(He has) learned to speak English.

 

であることは周知のことですよね。

 ただ、用例は少ないが、become able toが使われているときもあります。ここから言えることは、become able toという表現そのものが問題であるというより、「英語を話せるようになった」にbecome able toを使ったことが問題なのでしょう。

 

 He has become able to speak English.

 

という表現自体は問題ないと思うのですが、「英語を話せるようになった」は「いろいろ学んで英語を話せるようになった」という意識が働くので、

 

 He’s(He has) learned to speak English.

 

と表現するのが自然だと、ということになるのでしょう。

 

 さて、getのウで「一時的な状態を表す形容詞・過去分詞のみに用いられ、永続的な状態を示す形容詞・過去分詞と用いるのは不可」とあり、

 

 She got famous.

 

は×ということになりました。

 では、「年をとる」はどうでしょう。

 「年をとる」のも一時的な状態ではなく、いったん年をとると永続的に続きます。

 研究社新英和大辞典の用例

 

 He is getting old.

 「年をとってきた」

 

は、進行形にしているので、「だんだん年をとってきた」という意味になり問題はないでしょう。

 しかし、オックスフォード現代英語用法辞典の用例

 

 When you get old your memory gets worse.

 「年をとると記憶力が鈍る」

 

は、進行形にしていません。

 おそらく、oldに関しては「年齢の変化」があるのでgetでも表現することが可能なのでしょう。たしかに、tallやfamousも、身長や有名度には変化があります。しかし、「背が高いか低いか」「有名か無名か」と違って、oldは「50歳、60歳、70歳」と変化していく感覚があります。そう考えると、

 

 get old(grow oldも可)

 

が使われることには問題がないのでしょう。

 ちなみに、「年をとる」を言うとき、

 

 「白髪になる」はgo grey

 

とは言っても

 

 get grey

 

とは言いません。

 逆に、

 

 get(grow) old

 

とは言っても

 

 go old

 

とは言いません。

 「色(色彩)」を表現するときにはgo(文語体ではturn)が使われgetは使いません(オックスフォード現代英語用法辞典より)。

 go C「Cになる」のCには「好ましくない」意味の語がくることは、いくつかの辞書にも掲載されて、結構有名な知識ですね。

 逆に、「好ましい状態になる」ときにcomeが使われますが、goとcomeの関係を考えると面白いですよね。

 

 My dream has come true.

 「私の夢がかなった」

 It’ll all come right in the end.

 「最後にはすべてうまくいくでしょう」

 (Everything will turn out all right.)

 

 少々長くなったので、今回はこのあたりで終えます。この続きはまた機会があれば、ということで。

 


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