英語の散歩道14ー表現の簡略化

慣用表現による簡略化

 次の日本文の英語表現について考えてみましょう。

 

 「人の話を最後まで聞く」

 

 まず、「意識的に聞く」のだから、

 

 hear「勝手に聞こえてくる、耳に入る」

ではなく

listen to「意識的に聞く、耳を傾ける」

 

を使うことになります。

 「人」は

 

 「目の前にいる特定の相手」を示したいのなら、the other person

 「(一般的に)他者」なら、someone、other people、others

 

となります。

 「話」は訳出する必要はないでしょう。

 

 Listen to me.

 

と表現するだけで

 

 「私の言うことを聞いてくれ。私の話を聞いてくれ」

 

という意味になるからです。

 「話」の英訳をあえて考えようとすると、少し面倒なことを考えなくてはいけません。

ⅰ 名詞で表現

 the other person’s story (?)

 storyは「ストーリーのある話」。話をするときにいつもスローリーを決めているわけではない。

 the other person’s talk (△)

 たしかに、英和辞典は、名詞のtalkに「話」という訳を与えています。しかし、名詞のtalkには「講演、講演での話」というニュアンスが強いことに注意しなければなりません。

 

 名詞を使うのであれば、「意見」を意味するopinions、ideas、viewsなどを使えばいいでしょう。

 the other person’s opinions

 なお、一つの意見だと明確に決まっていなければ、通常、複数形で表現します。

 

ⅱ 第5文型で表現

 

○ listen to the other person talk

     V                O    C

 × listen to the other person talking

       V                O    C

 

 Cに原形(talk)を使うと、「話を最後まで聞く」

 Cに現在分詞(talking)を使うと、「話の途中を聞く(だけ」

 

という違いが生じます。

 この場合、「話を最後まで聞く」のだから、原形で表現しなくてはいけません。

 

ⅲ 関係詞whatを使って表現

 ⅱと同じく、「最後まで聞く」のだから

 

 what the other person saysであってwhat the other person is saying

 

ではありません。

 ⅰ~ⅲと考えるのは結構面倒なことなので-エネルギーも消費します-、

 

 listen to the other person

 listen to someone

 

で十分でしょう。

 次に、「最後まで」ですが、

 

 till(until) the end of ~

 

と英訳すると、どうしても、「~」のところの表現で

 

 his story(their stories)

 his talk(their talks)

 

としなければなりません。

 ところが、ⅰで見たように、この場合、名詞自体に若干の問題がある上に-talkなら、まだいいと思いますが-、そもそも、講演などとは違って、人に話をする際に、いつも「終わり(end)」を決めているわけではありません。

 通常、話し終わったところが「話の最後」なので、

 

 till(until) he finishes talking(speaking)

 till(until) they finish talking(speaking)

 

でいいわけです。

 いろいろ分析しましたが、少し面倒ではありました。

 「相手の話を最後まで聞く」なら、

 

 listen to the other person till he finishes talking.

  listen to someone till they finishes talking.

 

でもいいのですが、

 

 「私の話を(さえぎらずに)最後まで聞いてくれ」

 

と言うときに、

 

 Listen to me till I finish talking.

 

なんて、まるで下線部を機械的に付け足したような、印象を受けます。

 会話では、

 

 Listen to me.

 

だけで、十分でしょう。

 ただ、「最後まで」を強調する、正確な表現を意図するのなら、

 

 Hear me out.

 Just hear me out.

 

という、慣用表現(hear 人 out)が使えます。

 「相手の話を最後まで聞く」も

 

 hear the other person out.

 hear someone out.

 

と表現すれば、面倒な分析をする必要はありません。

 こちらが話しているときに、相手が口を挟んできたら、

 

 Hear me out.

 Just hear me out.

 

と言いましょう。

 hear 人 outは結構使われる表現ですが、最近、この表現を聞いたのは、3月5日(金曜日)に放送されていた、「スーパーナチュラル」という、アメリカのテレビドラマシリーズ12で、登場人物の女性が大切な話をしている場面で、目の前にいる友人の男性が途中で口を挟んできたときでした。

 女性は、相手の男性に、一言

 

 Just hear me out.

 

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