英語の散歩道16ー能動態と受動態

 “英語の散歩道”としては、6月以来の久しぶりの更新です。

 今回は、「能動態と受動態」についてお話しします。

 一般に、能動態と受動態は、どちらの表現が使われているかを別にすれば、同じ意味を伝えます。

 しかし、能動態を受動態に、逆に、受動態を能動態にすることによって異なる意味を伝えることもあるので、注意することが必要です。その意味で、安易に両者を書き換えて表現することには危険性があります。

 例えば、

 

 「私はその知らせに驚いています

 I’m surprised at the news.

 

を能動態に変えて

 

 The news surprises me.

 

と表現すると、

 「その知らせは私を驚かせる

という意味になって、明らかに、おかしな表現になってしまいます。

 「~に驚いている」は「今の状態」を表しますが、能動態に変えたために、「状態」を表すbe動詞が消えてしまったからです。

 

 The news surprises me!

 

が、文意として成立するとしたら、ある知らせが急に届いて、「びっくりしたなあ!」という意味を伝える表現、ということになります。逆に、このときは、

 

 I’m surprised at the news.

 

は、おかしな表現ということになるでしょう。「びっくりした」という瞬間的な気持ちを伝えるのに、「驚いています」という状態を伝える表現はおかしいからです。

 

 別の例を取り上げると、

 

 「ニューヨークほど、多くの言語が使われているところはほとんどない」

 There are few places where so(as) many languages are used(spoken) as in New York.

 

を、能動態にして

 

 There are few places where people use(speak) so(as) many languages as in New York.

 

と表現すると、

 

 「ニューヨークほど、人が多くの言語を使っているところはほとんどない」

 

という意味になります。

 「一人の人間が多くの言語を使う」、いわゆる、「バイリンガルトリリンガルが多い」という、別の意味を伝えてしまいます。

 

 もう一つ例を挙げると、

 

 I have a lot of work to do.

 「するべき仕事がたくさんある」

 

とは言っても

 

 I have a lot of work to be done.

 

とは言いません。

 これは、主語がIなので、能動の意識が働いてto doとなるためだと考えられます。

たしかに、受動態の場合、be doneの主語はworkなのですが、どうしてもI be doneという意識が働いて違和感を覚えるためかもしれません。

 その証拠に、Iではなくthereで始めると、

 

 There’s a lot of work to do.

 There’s a lot of work to be done.

 

のどちらの表現も認められ、同じ意味を伝えます。

 ところが、workを~thingという単語に変えると、能動態を受動態では伝える意味が異なってきます。

 

 There’s nothing to do.

 「することが何もない(何も娯楽がない)」

 There’s nothing to be done.

 「どうしようもない(それを元どおりに直す方法はない)」

 -オックスフォード現代英語用法辞典より

 

 workとは違って、nothingのような汎用性が強い語は、能動態の場合は、「私、あるいは、私たちがする」という能動性が出るのに対して、受動態の場合は能動性が出ません。「なされることがない」、つまり、「どうしようもない」という意味になるのは、能動性がないことに起因しているのかもしれません。

 

このエントリーをはてなブックマークに追加