英語の散歩道ーたった1語を加えただけなのに

1語を加えただけなのに

 

 たった1語を加えただけで、意味が異なってしまう場合があります。

 

 What’re you doing?

 

は、

 

 「何しているの?」

 

です。

 この文にhereを加えて、

 

 What’re you doing here?

 

と言うと、「あなたがここにいることが意外だ」という気持ちを込めて、

 

 「どうして君がここにいるんだい?」

 「どうしてあなたがここにいるの?」

 「ここで何しているの?」

 

という意味になります。

 さらに、それとは違った意味でも使われます。

 最近見たテレビドラマ“プロディガル サン 殺人鬼の系譜”の中で、父親が息子に向かって、

 

 「いつまでここにいるつもりだ(ここに何の用があるんだ)。早く家に帰ろう」

 

という気持ちを込めて、

 

 What’re you doing here?

 

と言っていました。

 

 別の例を挙げると、

 

 「手助けできてうれしいよ」

 

という意味の英語は、

 

 I’m glad to help.

 

ですが、これにyouを加えて、

 

 I’m glad to help you.

 

と言うと、

 

 「あなたを援助することができてうれしいです」

 

となり、金銭的援助を意味することがあります(そうでないケースもあります)。

 

 “2語加えて意味が異なってしまう”別の例を挙げると、

 

 What’s the matter?

 

は、

 

 「どうしたのですか?」

 

ですが、これにwith youを加えて、

 

 What’s the matter with you?

 

と言うと、

 

 「どうしたんだい?いつもの君らしくない」

 「どうしたんだい?いつもと違って、変だよ」

 

という意味になります。

 安易な単語の追加にご注意を!

 

 

英語の散歩道ー動名詞の主語

動名詞の意味上の主語の形

 前回のブログ“touch down”で、次の例文を挙げました。

 

The mere sight of him is like touching down for a moment.

 

 この例文を挙げたとき思い浮かんだことがあるので、忘れないうちに書き留めておこうと思います。

 動名詞の主語についてですが、普通に英語を学んでいる人なら、

 

 動名詞の主語は、所有格か目的格

 

という基本的知識を持っているはずです。

 例えば、

 

 I’m proud of my son’s being a doctor.

 I’m proud of my son being a doctor.

 

という英文で、

 

所有格my son’s、目的格my sonは、それぞれ動名詞beingの主語

 

の働きをしています。

 roomのように、アポストロフィsを付けることができない場合は、

 

 He complains of his room being too small.

 

のように、目的格(主格と同じ形)のthe roomを動名詞beingの主語として使います。

 さて、動名詞の主語は、本来は所有格で、

 

I’m proud of my son’s being a doctor.

 

となるはずですが、my son’sの前に前置詞ofがあります。

 

 前置詞の後には、前置詞の目的語

 

がきます。

 目的語は当然目的格の英語を使うので、その意識が働けば

 

 I’m proud of my son being a doctor.

 

と、目的格sonを使う人もいるわけです。

 かくして、

 

 動名詞の主語は、所有格か目的格

 

となるわけです。

 本題に入りますが、The sight of ~の、~の部分に、主語と動詞から文を入れるとどうなるでしょうか。

 もちろん、前置詞(of)がある以上は動詞にはingを付けて動名詞にしなければなりません。

 例えば、

 

 「少年が子犬と散歩しているのを見るだけで、ほっこりする」

 

という日本文を考えてみましょう。

 

 「子犬と散歩する」

 

は、

 

 walk with a dog

 

ですが、ofの後にくるので、

 

 walking with a dog

 

となります。

 「少年」はwalk(walking)の主語なので、所有格か目的格にして

 

 The mere sight of a boy’s walking with his dog makes me heartwarming.

 The mere sight of a boy walking with his dog makes me feel calm and peaceful.

 

の、どちらでもいいはずです。

 しかし、このケースでは、目的格boyを使った英文で表現するのが普通なのです。

 sightの動詞はseeです。seeを使って、

 

 「少年が犬と散歩しているところを見る」

 

の英文は、

 

 I see a boy walk with his dog.

 

です。

 seeの後は目的語なので、当然、目的格の英語boyがきます。この意識が働き、seeを名詞sightで表現しても、そのまま目的格boyが続くのです。

 従って、このケースでは、

 

 The mere sight of a boy walking with his dog makes me ~.

 

と、目的格を使って動名詞の主語を表すことが一般的なのです。

 その言葉のシャワーを浴びることができない環境での外国語学習において、文法が大切なのは言うまでもありません。しかし、文法が先にあるのではなく、その時々の意識や目的を持って表現されたものを体系的に整理したものが文法であることも忘れてはいけません。

 自戒を込めて。

 


www.youtube.com

英語の散歩道ーtouch down

Touch down

 touch downは、アメリカンフットボールというスポーツで、相手チームのゴールラインを越えてエンドゾーンに入って得点することです。

 CODOALDなどの定義を使って書き換えれば

 

 touch the ball on the ground behind the opponent’s goal line

 

ということになります。

 そこから派生して、

 

 「飛行機が着陸する」

  come down to land(OALDの定義)

  alight(OALDCODの定義)

 

という意味でも使います。

 最近見たドラマでは、“S.W.A.T.5”の中で、その意味で使われていました。

 “S.W.A.T”は、シェア-・ムーア主演の「スワットの活躍を描いたアメリカドラマ」で、主演のシェア-・ムーアは、アメリカで大ヒットしたドラマ“クリミナル・マインド”の中の中心人物の一人でした-僕も、よく視聴しています。

 

 ところで、この“touch down”ですが、辞書には載っていませんが、次のような使い方もできます。

 

 The mere sight of him is like touching down for a moment.

 

 パイロットは、飛行中、事故を起こさないように最新の注意を払って操縦しなければなりません。飛行機が空港に無事に着陸すれば、緊張から解放されてほっとすることでしょう。

 つまり、

 

The mere sight of him is like touching down for a moment.

 

は、

 

 The mere sight of him reassures me.

  The mere sight of him gives me a warm feeling in each day.

 

みたいなもので、

 

 「彼の姿をみるだけで、少しほっとする気分になる(ほっこりする)」

 

という意味になります。

英語の散歩道ー年をとる

「~になる」その2

 

以下、同僚に送ったメールです

「年をとる」という表現が一番気になっていた点だと言っていましたが、

 

 become old(er)

 

という、becomeに関する記述が抜けていました。

 もちろん、becomeで表現することも可能です。

 手元の辞書や、その他、文献には

 

 get old(er)

  grow old(er)

 

しか載っていなかったので、その2例について触れただけで、

 

 become old(er)

 

も、問題ありません。

 外国語というのはまことにやっかいなもので、理屈では(文法的には)可能でも、自然な表現として一般に使われているかは別問題ですから。

 例えば、

 

 「~するには、・・・するのが一番よい」

 

という日本語の英訳として、

 

 The best way to ~ is to ・・・.

  In order to(To) ~, it is best to ・・・.

 

など、いくつかの表現が考えられますが、

 

 In order to(To) ~, it is the best way to ・・・.

 

はどうか、ということになると、「慣用的に使わない」ということになります。

 文法的にはまったく問題なく、解釈の観点からみた意味も問題ないはずです。しかし、「一般的ではない」と言われてしまえば、それで終わりです。

 wayを使うのであれば、

 

 The best way to ~ is to ・・・.

 

 形式主語のitを使うのであれば、

 

 In order to ~, it is best to ・・・.

  To ~, it is best to ・・・.

 If you want to ~, it is best to ・・・.

  If you are to ~, it is best to ・・・.

 

と、bestを使い、ここでthe best wayは使いません。

 best以外の単語を使うのであれば、most desirableやmost advisableを使って、

 

 In order to ~, it is most desirable to ・・・.

  In order to ~, it is most advisable to ・・・.

 など

 

と表現します。

 

 話をbecome old(er)に戻しますが、getが使えるのだからbecomeも、と、単純にいかないところが言葉のやっかいなところです。

 ちなみに、become old(er)を使った表現を1つだけ紹介しておきます。

 

 If you carry your childhood with you(,) you never become older.

 「子供のころの気持ちを持ち続ければ、決して年をとらない」

 

 チェコ生まれのイギリス人Tom Stoppardの言葉です。

 チェコで生まれ、シンガポールを経て、イギリスで有名になった劇作家です。

 彼の作品“Rosencrants and Guildenstern Are Dead”は、

 

 “ transferred to Broadway in 1967 and later received a Tony Award for best play.”

 

とあるように、ブロードウェイの優秀作品に授与されるトニー賞を取ったぐらいですから、アメリカ演劇界でも有名な人だったのでしょう。

 先生はまだまだ若いので、これからいくつもの疑問を解決し、多くの発見をしていくことでしょう。

 僕も、トム・ストッパードの言葉のように、

 

 If you carry your childhood with you you never become older.

 

と、新鮮な気持ちをもって挑戦していきたいところですが、現実は、

 

 You can’t fight aging.

 「年には勝てない」

 

というところです。

 


www.youtube.com

英語の散歩道(~になる)

「英語の散歩道」というタイトルでブログを書き出して3年以上になりますが、諸々の事情で「このへんでいったんペンをおこうか」と考えていました。

 しかし、ここ2年ほど、複数の同僚からの質問も増え、頭を整理する意味でもブログを続けるのも意義があるかな、と思い直し、ペースダウンしてでも続けといこうかとも考え直しました。

 ただ、投稿の間はかなりあくかもしれませんし、ひょっとすれば、ペンをおくことになるかもしれません。それまで付き合っていただければ、と思います。

 以下、「~になる」という表現について、同僚からの質問に答えて送ったメールです。

 

 

「~になる」

「~になる」といっても、いくつもの語が使われていますよね。

 

 become、get、grow、fall、turn、go、come、runなど

 

 まずは、ジーニアス英和辞典から見ていきましょう(記述・表現の仕方は一部変えています)。

 

ア Cは名詞、形容詞、過去分詞

イ getより堅い語

ウ 現在形で使うのはまれ

 

1 He became(× got) a king / a teacher.

   Cが名詞の場合getは不可

2 She became(got) sick / wiser.

3 She became(× got) famous.

   この例文に関して、get(自動詞)の項目に「一時的な状態を表す場合のみに用いられ、永続的な状態を表す形容詞・過去分詞と用いられるのは不可」と説明し、

  She became(× got) tall / famous / pretty.

  という例文を載せています。

4 The truth will never become known to them.

   この例文に関して、「純然たる受け身の場合は、becomeは不可」と説明し、

   He was(got、×became) killed.

   という例文を載せています。

5 I want to become(be) a teacher.

   この例文に関して、「これから~になる」という意味ではbeと交換可」と説明しています。

  5に関してですが、言い換えれば、「すでに先生になっている」場合は、becomeは不可ということになります。

  例えば、

  「彼は成長し、りっぱな先生になった」

  を英語にした場合、

  He’s grown up to be a good teacher.

  (副詞的用法・結果のto)

  とは表現しても

  He’s grown up to become a good teacher.

  とは言わない、ということになります。

  これは当然のことで、「彼は成長して、すでにいい先生になっている」わけで、「これからいい先生になる」わけではないですから。

  (なお、

  grow to be

  と表現すると、

  get to be ~「~になる」

  と同じ意味になります。

  grow up to be ~

  と表現しないと、「成長して~になる」とはなりません-釈迦に説法でしたね。失礼!)

  話を戻しますが、

  「彼はいい先生になるために一生懸命勉強した」

  なら、「これからいい先生になる」わけですから、

  He studied hard in order to be a good teacher.

  He studied hard in order to become a good teacher.

  のどちらでもいい、ということになります。

 

 次に、getに関するジーニアス英和辞典の例文、解説を見てみましょう。

ア becomeより口語的。

イ Cは形容詞・形容詞化した過去分詞。名詞は不可。

ウ 一時的な状態を表す形容詞・過去分詞のみに用いられ、永続的な状態を示す形容詞・過去分詞と用いるのは不可。

  ただし、進行形では可能。

  × She got tall.

○ She is getting tall.「彼女は背が伸びている」

 ウの説明箇所で、「進行形では可能」というのはよくわかりますよね。「状態にだんだん変化が現れている」ことを進行で表現することはできるわけですから。

 例えば、resembleが「今、誰々に似ている」というときは

 ○ She resembles her mother.

 × She is resemble her mother.

ですが、「彼女はお母さんにだんだん似てきた」なら、

○  She is resembling her mother.

ですから。

 

 この段階で2点、疑問が生じませんか?

 まず、getの解説イの「Cは形容詞化した過去分詞」という箇所です。

 たしか、becomeの例文4で、「純然たる受け身の場合は、becomeは不可」と説明し、

   He was(got、×became) killed.

という例文を載せていました。

 つまり、tired、interestedのように形容詞化した過去分詞でもgetなら使えることになります。ところが、getのイでは「Cは形容詞化した過去分詞」と限定しているのです。killedが形容詞化していない過去分詞であることは明白です。

 これはどういうことでしょうか。

 この点を明らかにするために、今度は「研究社新英和大辞典」のgetの項目を見ると、

「受け身には、通例動作主を表すby句は用いられず」という解説があり-同じ内容はジーニアス英和辞典でも書かれています-、

 hurt、caught、stuck、drownedなどの語と共にkilledも掲載されていました-なお、過去分詞をどの段階で形容詞と考えるのか、恣意的な面もあります。

 例えば、caughtやstuckなどは

 I got caught in a shower and (got) drenched / soaked.

 「土砂降りにあって、ずぶ濡れにあった」

 I got(was) caught in a traffic jam.

 「渋滞にあった」

 I got stuck in traffic congestion.

 「渋滞にあった」

 などの表現でお馴染みですよね。

 

 つまり、byを使って、「~によって」と、受動態の意味合いが強く出た場合は、becomeは当然として、getも不可ということになります。

 

○  He was(got) killed in the traffic accident.

 × He was(× got) killed by them.

 

 なお、強い目的意識が働けば、逆にbe動詞は不可になります。

 

 He got(× was) arrested to prove her innocence.

 「彼は彼女の無罪を立証するためあえて逮捕された」

 (ジーニアス英和辞典の用例より)

 

 これは当然のことで、was arrestedは完全な受動態です。受動態は別名「受け身」と呼ばれています。自分の意志で「~される」のはもはや「受け身」ではありませんから。

 

 ところで、その他いくつかの問題もあります。

 一般に、「~である」という「状態」を表すbeを「~の状態になる」という意味にするにはbeをbecomeにする、と学習します。

 例えば、

 be able to ~

 「~できる」

を、「~できるようになる」という意味にしたければbecome able toにする、と聞いた人もいるでしょう。

 

 「彼は英語を話せる」

 He is able to speak English.

 

を、「彼は英語を話せるようになった」という意味にしたければ

 

 He has become able to speak English.

 

と表現すればいいことになります。

 実際、大学受験の英作の解答例として上述の英訳例が載っていたりしました(します?)。

 しかし、この英語はしばしば「日本人的発想の英語」という指摘も受けました。

 自然な英語は、

 

 He’s(He has) learned to speak English.

 

であることは周知のことですよね。

 ただ、用例は少ないが、become able toが使われているときもあります。ここから言えることは、become able toという表現そのものが問題であるというより、「英語を話せるようになった」にbecome able toを使ったことが問題なのでしょう。

 

 He has become able to speak English.

 

という表現自体は問題ないと思うのですが、「英語を話せるようになった」は「いろいろ学んで英語を話せるようになった」という意識が働くので、

 

 He’s(He has) learned to speak English.

 

と表現するのが自然だと、ということになるのでしょう。

 

 さて、getのウで「一時的な状態を表す形容詞・過去分詞のみに用いられ、永続的な状態を示す形容詞・過去分詞と用いるのは不可」とあり、

 

 She got famous.

 

は×ということになりました。

 では、「年をとる」はどうでしょう。

 「年をとる」のも一時的な状態ではなく、いったん年をとると永続的に続きます。

 研究社新英和大辞典の用例

 

 He is getting old.

 「年をとってきた」

 

は、進行形にしているので、「だんだん年をとってきた」という意味になり問題はないでしょう。

 しかし、オックスフォード現代英語用法辞典の用例

 

 When you get old your memory gets worse.

 「年をとると記憶力が鈍る」

 

は、進行形にしていません。

 おそらく、oldに関しては「年齢の変化」があるのでgetでも表現することが可能なのでしょう。たしかに、tallやfamousも、身長や有名度には変化があります。しかし、「背が高いか低いか」「有名か無名か」と違って、oldは「50歳、60歳、70歳」と変化していく感覚があります。そう考えると、

 

 get old(grow oldも可)

 

が使われることには問題がないのでしょう。

 ちなみに、「年をとる」を言うとき、

 

 「白髪になる」はgo grey

 

とは言っても

 

 get grey

 

とは言いません。

 逆に、

 

 get(grow) old

 

とは言っても

 

 go old

 

とは言いません。

 「色(色彩)」を表現するときにはgo(文語体ではturn)が使われgetは使いません(オックスフォード現代英語用法辞典より)。

 go C「Cになる」のCには「好ましくない」意味の語がくることは、いくつかの辞書にも掲載されて、結構有名な知識ですね。

 逆に、「好ましい状態になる」ときにcomeが使われますが、goとcomeの関係を考えると面白いですよね。

 

 My dream has come true.

 「私の夢がかなった」

 It’ll all come right in the end.

 「最後にはすべてうまくいくでしょう」

 (Everything will turn out all right.)

 

 少々長くなったので、今回はこのあたりで終えます。この続きはまた機会があれば、ということで。

 


www.youtube.com

 

英語の散歩道(節とwillの関係)

諸々の事情で、ブログを書くのは約10か月ぶりです。

みなさん、お元気でしょうか。

 

同僚で、某大手予備校講師の人からよく質問を受けることがあります。

なかなか面白い質問で、僕自身も勉強になります。

先日も、

 

「この英文で使われているwhether ~は名詞節か副詞節かのどちらでしょうか。名詞節のようにも思われるのですが、

未来の内容にもかかわらずwillが使われていないのです。また、辞書によっても意見が分かれていて・・・」

 

という質問を受けました。

英語に通じている人なら当たり前の知識ですが、

 

“時や条件を表す副詞節の中では、未来の内容であってもwillを使わないー例外的なケースもあります。名詞節の中なら、未来の内容ならwillを使って表現する”

 

という原則がありますね。

 例えば、

 

  I don't know whether he will come.

 「彼が来るかどうかわからない」

 

という場合、whether ~はknowの目的語になっていて、名詞節だから当然will comeと表現しています。

 ところが、careやmatterなどの動詞の後に続く場合はこの原則通りに表現されないのです。

 

 以下、僕が同僚に送ったメールです。

 

1 ある文におけるwhetherは名詞節か副詞節か

 2 whetherの中にwillを入れるべきかどうか

 

という2点の疑問についてですが、これは論点がまったく別で、

 

 It matters littleI don’t careなどの表現の後に続くのは名詞節か副詞節か

 

という問題に置き換えるべきだと考えられます。

 この問題に答える前に2つの文法事項(構文)について確認しておきましょう。

 

 1 他動詞の後には目的語がきて、従って、該当する語句やフレーズは名詞(名詞節)と考えるのが普通である。

 2 基本的には、未来の内容なら、名詞節の中にはwillを入れ、副詞節の中には-例外的な一部のケースを除いて-willを入れないのが原則である。

 

 研究者新大英和辞典の例文より

 

1 I wonder whether he will go himself or send you.

 

2 I don’t know whether he will be here.

 

3 It is doubtful(uncertain) whether he will come.

 

 以上、いずれも未来の内容の名詞節

 

4 Whether he comes or not, the result will be the same.

 

5 Whether we help or not, the enterprise will fail.

 

 以上、副詞節(譲歩節)

 

 ここまでは原則通りですね。

 しかし、この原則が、It mattersやI don’t careの後では違ってきます。それは、whetherに限ったことではありません。

 以下、ジーニアス英和辞典の用例より。

 

6 (自動詞としてのcare)

  I don’t care whether he leaves or stay.

 

 本来ならcareの後のwhether ~を目的語として捉え、名詞節であるが故にwill leave ~となるところ。

 

7 (他動詞としてのcare)

  Who cares when she marries(× will marry)?

 

 6のケースと違って、他動詞としてcareを定義付けしているにもかかわらず、名詞節(疑問詞節)のwhenの中のwillの使用を否定している。

 なお、6を自動詞のcare、7を他動詞としてのcareと分けた理由は不明である。

 この点、研究社新英和大辞典は割り切って両方のケースのcareを自動詞扱いしているが、そのほうがすっきりしているように感じます。

 以下、研究社新英和大辞典の用例より。

 

8 I don’t care if I go.

 

9 I don’t care what happens now.

 

 9のwhat ~は疑問詞節なので名詞節(careの目的語)のはずであるが、willを使っていない。

 

 matterにいたっては、さらに、原則通りに解釈できない。

 

 以下、ジーニアス英和辞典の用例より。

 

10 It matters little if(whether) he succeeds or not.

  (if / whether節の中にはwill、wouldは用いない)

 

 whetherはともかく、ifはor notを用いている以上完全に名詞節だと考えられるが、×will、wouldなのである。

 

11 It doesn't matter to(with) me whether she comes here or not.

 

 以下、研究社新英和大辞典の用例より。

 

12 It doesn’t matter whether we are late.

 

 なお。英々辞典の用例では、

 OALDは、careを自動詞と定義して

 

13 He doesn’t care much (about) what happens to me.

 

14 He doesn’t care what they say.

 

 ただ、上の2例は、未来や現在に関係なく「いつも気にしない」と考えることもできます。

 

15 It doesn't matter to me what you do or where you go.

 

 オックスフォード現代英語用法辞典には

「現在時制はIt doesn’t matter、I don’t care、I don’t mind、It’s not important、No matter where、Whereverおよび類似の表現の後でも用いられる」

 

という解説の後に、

 

16 It doesn’t matter where we go on holiday.

 

17 I don’t care what we have for dinner if I don’t have to cook it.

 

という用例を載せています。

 もっとも、この2例も「未来」というより「いつも気にしない」というニュアンスが読み取れます。

 おそらく、未来という意識はなく、この「いつも気にしない、重要ではない」という意識が

 

It doesn’t matterI don’t careI don’t mindIt’s not importantNo matter whereWhereverおよび類似の表現の後では現在時制が用いられている

 

理由ではないかと思われます。

 なお、オックスフォード現代英語用法辞典の“whether ~ or not”の説明の箇所に

 “whether ~ or notの節は文につけ加えられることがある。その意味はIt doesn’t matter whether ~ or not「~であろうとなかろうとかまわないが」で始まる新しい文と似ている”

 

という記述がありました。

 これは、元々あった文

 

 I don’t care.

 It doesn’t matter.

 

に、副詞節

 

 whether ~ or not

 「~であろうとなかろうと」

 

を加えたものと解釈できます。

 いずれにせよ、

 

 I don’t careIt doesn’t matterI don’t mindIt’s not importantOALDCODmatterbe of importanceと定義している)などの表現の後に節を続けた文は、未来という意識ではなく、「いつでも気にしない、どうでもいいことだ」という意識が働き、現在時制で表現するのが基本である。このとき、例えば、whether or notを「~かどうか」と名詞節として訳そうが、「~であろうとなかろうと」と副詞節として訳そうが、どちらも言っていることは同じであり、それは日本語の問題であって大した問題ではない

 

ということになります。


www.youtube.com

 

映画と英文法15ーhaveとhave got

映画と英文法15-haveとhave got

 

刑事:Your wife, she’s, she’s got the money in the family, doesn’t she?

 

 今回は、haveとhave gotを取り上げますが、あまり意味のある検討材料ではありません。

 

 今回の映画「逃亡者」は、アメリカ映画なので、アメリカ英語-以下、米語-を中心にして話すと、イギリス英語-以下、英語-よりは若干単純で、基本的にはhaveで表現できます。

 

 所有(物、事、親類や兄弟のような人、病気、問題など)は、英米問わず、haveで表現できます。

 今回のように、くだけた話し言葉(会話)では、英米ともに、haveの代わりにhave gotを使うこともよく見られることです。

 

 I have a brother.

 I’ve got a brother.

 

 I have a 1960-model classic car.

 I’ve got a 1960-model classic car.

 

 I have a problem.

 I’ve got a problem.

 

 I have a headache.

 I’ve got a headache.

 

 I have an appointment with Mr. White at 10 a.m.

 I’ve got an appointment with Mr. White at 10 a.m.

 

 米語では、さらにくだけて、haveを省略し、

 

 I’ve got a problem.「問題を抱えている」

 I got a problem.

 

と、表現することもあります。

 

 ただし、過去形で用いたり、準動詞(不定詞・動名詞・分詞)で用いたりすることはないので注意しましょう-すくなくとも、正用法とは認められないでしょう。

 

○ I had flu last week.「先週、インフルエンザに罹っていた」

× I had got flu last week.

 

○ He seems to have a brother.

 × He seems to have got a brother.

 

 さらに、反復・習慣の気持ちが入れば、have gotは使わないので、注意しましょう。

 

 I don’t usually have wine.

「普段から、ワインは置いていないんだ」

 →「普段、ワインは飲まないんだ」

 I haven’t got any wine.

 = I don’t have any wine.

 「ワインがまったくない」

  →「ワインが切れたから、買いにいかなければ」

 

 I often have headache.

 「普段からよく頭痛がするんだ」

 I’ve got headache.

 「今、頭が痛くなってきた(頭が痛い)」

 I have headache.

 「今、頭が痛い」

 

 反復・習慣の気持ちが入れば、have gotは使わないが、「今、~」というときは、どちらも使います。

 

 どちらを使うべきか、なんてことは意識せずに、基本的には、haveを使えばいいのです。実際の会話の場面で、「こんな場面は、have gotも使うんだ」という感覚を少しずつ身に付けていけばいいでしょう。

 

 これは、have toとhave got toにも同じようなことが言えます。

 

 「反復、習慣」はhave to、1つのことについて述べるのはhave got toを使うことが多いが-特に、くだけた英語では-、have toも用います。

 「緊急性」を伴った場合でも、have got toがよく用いられるが、have toも用いられます。

 このことは、OALD(Oxford Advanced Learner’s of Current English)の用例でも裏付けられます。

 

 Do you often have to go to the dentist’s?

→ 反復・習慣

 Have you (got) to go to the dentist’s today?

 → 1つの事柄(今日一回の事柄)で、ひょっとすれば、緊急性もあるかもしれないが、gotは括弧でくくられている。つまり、have toでもいいということになる。

 

 The children don’t have to go to school on Sundays, do they?

→ 反復・習慣

 You haven’t (got) to go to school today, have you?

 → 1つの事柄(今日一回の事柄)だが、gotは括弧でくくられている。つまり、have toでもいいということになる。

 

 I have to be getting along(= must leave) now.

 「そろそろおいとましなければ」

 → 緊急性が出ているが、have toが使われている。

 

 

 なお、くだけた英語では、特に、1つのことがら、あるいは、緊急性があるときにhave got toを使われます-繰り返すが、have toでもよい。

 

 「もう、行かなきゃ」

 I have to go now.

 I’ve got to go now.

 

 米語では、さらにくだけて、haveを省略し、

 

 I got to go now.

 

 これを発音つづりで表現すると、

 

 ( I ) gotta go.

 

となります。

 

 

 ところで、今回のセリフでは、moneyにtheが付いています。

 通常、「特定の目的を示すお金」で、moneyにtheを付けたりしますが、基本的には、moneyにtheを付けません。

 moneyにthe(あるいは、one’s)を付けると、

 

 money = a lot of money、plenty of money

 

という意味になるのです。

 辞書の定義を見てみましょう。

 

 (ジーニアス英和辞典)

 「富、財産、資産」と定義して、

   lose one’s money「財産を失う」という例文を載せています。

 さらに、

  be in the money「大金持ちである(になる)」

 という慣用句を載せています。

 

 (COD)の定義

  in the money = having plenty of money

 

 (OALD)の定義

  be in the money = be rich

 

 以上の定義より、

 

 be in the money

  have the money

  have got the money

  = have plenty of money、be rich

 

となるわけです。

 このinは「状態、状況」を表すinで、「~に包まれている」という感覚で捉えればいいでしょう。

 

 be in the habit of ~ing = have the(a) habit of ~ing

 be in good health = have good health

 

と同じです。

 今回のセリフでは、「奥さん自身だけが金持ち」というより、in the familyが付いているので、

 

 is in the money

 

ではなく

 

 has(has got) the money

 

で表現したのです。

 

 ちなみに、研究社新英和大辞典では、

 

 in the money「金持ちで」(口語

 

と、(口語)という条件で定義していますが、

 OALDでも

 (colloq)と条件付けています-colloqとはcolloquialism「口語体」の略語です。「会話(会話体、会話調)の英語」を、colloquial Englishと言いますが、それのことです。

 

youtu.be

 

 このエントリーをはてなブックマークに追加