映画と英文法13ー付加疑問
映画と英文法13
キンドルが、刑事から尋問を受けているシーンです。
刑事 :Your wife, she’s, she’s got the money in the family, doesn’t she?
キンブル:Helen comes from a wealthy family. Yes.
刑事 :Is she insured?
キンブル:Yes, she is.
刑事 :Who’s the beneficiary?
キンブル:I am.
刑事 :The sole beneficiary?
キンブル:Yes.
刑事 :Financially, you’re not going to be hurting after this then, are you? I mean, she was worth quite a bit of money.
キンブル:You suggesting that I killed my wife? Are you saying that I crushed her skull, and that I shot her? How dare you?
「映画と英文法12」の続きです。
今回は、有名な付加疑問を取り上げます。
同意を求めたり、確認するためであったり、念を押したりするために用いる疑問文で、代表的な形は単純です。
肯定文に対しては否定形、否定文(準否定文も含めて)に対しては肯定形で受けます。
1 He is a doctor, isn’t he?
「彼は医者ですよね」
2 He isn’t a doctor,
「彼は医者ではないですよね」
3 This custom doesn’t agree with you, does it?
「あなたは、ここの習慣になじめないのですね」
4 He won the game, didn’t he?
「彼は試合に勝ったんでしょ」
5 He can swim, can’t he?
「彼は泳げますよね」
6 He has already gone, hasn’t he?
「彼はもう出かけましたよね」
という具合です。
今回扱ったセリフ
Your wife, she’s, she’s got the money in the family, doesn’t she?
では、has gotはhasと同じ意味で使っているので、一般動詞扱いをして、doesn’t sheで受けています-なお、have(has)は、助動詞扱いをしてhaven’t(hasn’t)で受ける場合もあります。
ただ、今回のセリフで、hasで受けてしまうと、通常の現在完了となり、has got = hasの関係でなくなってしまいます。それゆえ、当然、doesn’tで受けることになります。
準否定と呼ばれる、seldom、rarely、few、littleなどは、否定とみなして肯定形で受けます。
7 She seldom eats out, does she?
「彼女はめったに外食しないですよね」
8 There were few tourists in the temple grounds, were there?
「お寺の境内で、観光客の姿はほとんど見かけなかったですよね」
→ there構文におけるthereは主語ではないが、付加疑問はthereで受け る
9 I’m late, aren’t I?
「私は遅刻ですよね」
→ I amは、aren’t Iで受けることが一般的。am I notで受けることはまれである。
10 Sit down, will you?
「座ってもらえる?」
→ 命令文は、will you、would you、won’t you、can you、can’t you、could youなどで受ける
11 Sit down, would you?
「座ってもらえますか?」
→ will youと違って、would youにすると、仮定法の婉曲を使ったぶんだけ少し丁寧になる。
12 Sit down, won’t you?
「どうかお座りください」
→ will youやwould youが命令しているのに対して、won’t youは相手に行為をすすめる気持ちに近くなる。なお、否定の命令文は、当然、won’t youではなくwill youで受ける。
Let’sの命令文はshall weで受けるが、Let me ~は通常の命令文と同じ扱いである。
13 Nothing can stop me, can it?
「何ものも僕を止めることはできないぞ」
→ nothingはitで受ける
14 Someone called me, didn’t they?
「誰かが僕を呼んだよね」
→ someone(somebody)、everyone(everybody)、nobodyは単数扱いだが、代名詞は通常theyで受ける
こうして整理すると、付加疑問にもいくつかのパターンがあることがわかります。
発音(読み方)として、上昇調で発音すれば、普通の疑問文に近くなり、下降調で発音すれば平叙文に近い印象を相手に与えます。
さて、否定の付加疑問ですが、一見、否定の疑問文に近い日本語訳になりますが、相手に当たる印象はずいぶんと違います。
例えば、
You don’t have a pen, do you?
と言うと、
「ペンをお持ちじゃないですよね。もしペンをお持ちなら、貸してほしいのですが」
という意味になります。
日本語でも、自分がペンを持っていなくて、相手にペンを借りたいときに
「ペンを持っていますか?」
とズバリと訊くとぶしつけな感じがして、
「ペンをお持ちじゃないですよね」
と、遠慮がちに訊くときがあります。
それに当たる英語です。
それに対して、
Don’t you have a pen?
と言うと、
「あなた、ペンを持っていないの?」
と、驚き、あるいは、非難とも取れる印象を相手に与えます。
もちろんこれは失礼になってしまうので、丁寧に、少し遠慮がちに頼むのであれば、
You don’t have a pen, do you?
You couldn’t lend me a pen, I suppose?
と表現することになります。
ところで、そもそも付加疑問はどうして、
肯定文は否定形で、否定文は肯定形で
受けるのでしょうか。
たとえば、
「彼は医者ですよね」
は、
「彼は医者だ、えっ、医者ではないのですか?医者だよね」
の下線部の部分が付加疑問になっているのです。
「医者ではないのですか?医者だよね」と、反対の意味の疑問を続けることによって、確認、念押しをしているようなものです。
否定の場合も同じで、
「彼は医者ではない。えっ、医者なの?医者じゃないよね」
という具合です。
もし後半部分(下線部の部分)を同形(肯定文に対して肯定形、否定文に対して否定形)で続ければ、どうなるでしょうか。
ここで2人の人間の会話を考えましょう。
A:彼は医者だ。
B:彼は医者なの?それは意外(驚き)だ。
英語にすると、
A:He’s a doctor.
B:Is he? It’s surprising.
下線部の部分をひとりの人間が言ったとしましょう。
He’s a doctor, is he?
もちろん、そのセリフの後には、
「それは意外(驚き)だ」( That’s surprising )
という気持ちが続くでしょう。
同形の付加疑問は、興味、驚き、場合によっては、非難の気持ちが込められる所以です。
A:I hear he’s getting married.
B:Is he? What does his fiancé(wife-to-be) look like?
A:彼、いよいよ、結婚するそうだよ。
B:そうなの?相手はどんな人だろう?
下線部をくっつけると、
I hear he’s getting married, is he?
「彼、いよいよ、結婚するんだってね(相手は、どんな人だろう)」
という、興味津々という気持ちが込められています。
このように、同形の付加疑問が存在するいじょう、
He’s a doctor, ( ) he?
ア is イ isn’t
で、「アかイか、正しいほうを選べ」という文法問題は成立しないですね。
たかが付加疑問、という気持ちで書き始めましたが、されど付加疑問でした。
少々疲れたので、このへんでペンを置く、いえ、キーボードを叩くのを止めます。